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10 小川村に「本州のへそ」 〜鐘の音響く賽銭箱

鳴るへそ玉手箱

 私たちの体の中心にあるへそ。その存在感は薄く、普段はほとんど気に掛けることもない。しかし、へそは現在の自分が在るうえで、なくてはならないものだ。

 言うまでもないことだが、母親の胎内に生命が宿った時、胎児の発育を支えたものは、母体の胎盤と胎児の臍輪を結んでいたへその緒という柔らかい紐である。これにより母体の血液から酸素や栄養を送り、胎児側からの不要物や二酸化炭素は母体へと移す働きをしていた。へそは、まさに母と子の生命の絆だったのである。

0626-goriyaku-10-1.jpg 小川村法地の山間に「本州のへそ」といわれる場所がある。美しい緑に包まれた自然の懐。聞こえてくるのは小鳥の声と川のせせらぎだけである。その深い木立の中に、御柱ならぬ高さ11メートルの「恩柱」が立っている。そこが本州のへそ地点だ。昔は神社が置かれていたと伝えられるだけに、辺りは森厳な空気に満ち、パワースポットの雰囲気も漂う。

 発端となったのは、2004年、標高差を無視して本州を平面図で見た場合の重心を探し出すというあるテレビ番組の企画だった。「その結果、東経137度58分40・2708秒、北緯36度39分17・75736秒のわが村の法地地区が、その重心だということが分かったのです」と村観光協会事務局の和田優孝さんは話す。

 つまり、日本地図から本州の形を切り抜いて法地の場所に重心点を置いてみると、ちょうどヤジロベエのようにバランスが取れるというわけだ。

 村は05年11月27日、その場所に柱を建て、「へそ」にちなんで父や母、先人の恩を忘れないで-との思いを込めて「恩柱」と名付けた。

 0626-goriyaku-10-2.jpg柱近くの傾斜地には風変わりな賽銭箱も設けられている=写真右。この賽銭箱は4カ所の投入口があり、賽銭は傾斜地に埋め込んだ全長21メートルのパイプを通り、受け箱に落ちる仕組みだ。硬貨が通る際にはパイプに埋めた26個の鐘にぶつかり、何度も鐘の音が響く。

 鐘の回数によって大吉から凶の運勢が決まる演出になっているが、途中で止まっていた賽銭まで一緒に受け箱に落とせば、高らかな音とともに大吉の上をいく「超吉」まで約束される。賽銭箱の名前も、鐘が鳴ることと本州のへそをかけて「鳴るへそ玉手箱」と命名した。

 たとえ鐘の音は少なかったとしても、静かな山間に響く澄んだ音色が心を洗ってくれ、うれしい気分を膨らませてくれるはずだ。
 問合せ/小川村観光協会事務局(電話)269・2323