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25 環境保全協会〜地球温暖化の防止で今程度の生存環境を

25-chino-0424.jpg 八十二銀行を退職後、長野県環境保全協会の仕事をライフワークにしています。動機についてはこの「あゆみ」の7回目で述べましたが、一口で言えば、現代の工業化社会の拡大は地球の生態系に負荷をかけ過ぎている。近いうちに行き詰まるという心配からです。長野冬季五輪開催の1998年に協会を設立しました。

 当時はまだ環境問題への一般の関心は高くなかったですが、五輪のスキー滑降コースをめぐって、環境かスポーツかという議論が起きました。これをチャンスに、世界の環境先進企業セイコーエプソンの安川英昭社長さんのお力添えと県内の志あるお取引先300社ほどに会員になっていただいて協会を発足させました。八十二銀行からも多額の資金援助を受けていますが、協会の運営はNPOや個人を含め、全県民の協会としてやっています。

子孫たちのために
 「今さえ良ければではなく、子孫のために少なくとも現在程度の生存環境を残したい」というのが協会設立の趣旨です。

 初めは3人のスタッフで銀行の一室を借りて出発しました。環境保全活動といっても当時はお手本はなく、何をやってよいやら手探りでしたね。翌年、社団法人の認証を受け、県内の環境保全活動をテレビで紹介するなど普及活動を広め、スタッフも増えて2001年、現在の82プラザに引っ越しました。環境問題の主題が、健康や自然保護から「地球温暖化防止」に移り、当協会も温暖化防止のセンターを県から委託されたんです。

 地球温暖化防止とは、簡単に言えばCO2の排出を激減させる、すなわち化石燃料に依存している現代社会を根本から見直すということです。

 現在、当協会では省エネ効果の高い、マイカーの節減と省エネ住宅の促進、それに自然エネルギーの太陽光発電に力を入れています。

 省エネ活動を一つご紹介しましょう。当協会が環境省などから表彰された事業に「省エネパトロール隊」があります。隊員7、8人が受診希望の企業に行って、実態を調べ、具体的な省エネ策をアドバイスする。中には年間1000万円も省エネ効果が上がった企業もあり、たいてい数百万円は節約できるんですよ。受診は無料ですが、力のある受診企業から隊員を1人出してもらって隊員を増やしていく仕組みです。セイコーエプソンさんが始めた活動で、社内だけではもったいないと諏訪地域に広めたものを、さらに県内に広めようと協会の事業にしたものです。

自然エネルギーで
 個人でも手が届くのは太陽光発電。これは、無限ともいえる太陽光エネルギーをほかの生物の力を借りずに直接人間の力で電気エネルギーに換える。節約ではなく創出でCO2排出削減をするんです。この分野での日本の技術は10年前まで世界のトップだったのに、国策として推進したドイツに大きくリードされたのは残念です。日本は不況対策でようやく太陽光発電に少し補助金を出しましたね。

 幸い信州は現在の水力発電で必要な電力の半分は賄えるんですよ。残りを太陽光発電や新たな小水力発電なんかで賄えば、化石燃料や原子力に依存せずに県民全員がやっていけますよ。

 いろいろな事がありましたが、考えてみると私は高校までに学んだことを実社会でやってみただけ。18歳で成長が止まったのではないかと思います。
(おわり)
(聞き書き・北原広子)
(2010年4月24日掲載)

 
茅野實さん