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01 ナポリ(イタリア) 抜け目ないナポリっ子

01-kaigai-0313map.jpg 「日光を見ずに結構と言うな」を英語ではSee Naples and die.(ナポリを見て死ね)という。ナポリは昔から風光明媚の地として知られてきた。

 ベスビオ火山とヌオーボ城を眺める高台に念願かなって家を建てた老夫婦は、私を招き入れて「どうだい。最高だろう」と鼻高々だった。私たちの泊まるホテルからもナポリ湾が見えた。向かいのカプリ島と共に、確かにここは地上の楽園のようだ。

 しかし、イタリア政府の推し進めてきた施策が北に偏重したため、ローマ以南の経済開発は遅れ、そのひずみがあちこちに出てきている。

 その最たるものが治安だ。こんなことがあった。市内を散策してホテルにバスで帰ろうとした時のこと。通勤帰りの人でほぼ満杯の車内で、私たちはつり革につかまり立ちをしていた。後ろにはイタリア語で声高に冗談らしきことを言っていた50代半ばのおじさん。車内が明るく和む。

01-kaigai.jpg 私たちにはむろん、その意味は分からない。ホテルに近いバス停で降りた私は、上着のポケットに覚えのない物が入っているのに気がついた。ハンカチに包まれた、使い掛けの目薬だった。「なんだコレッ?」。家内が「それ私の目薬!」。お互いに「そういえば、人込みで気付かなかったけど、少しポケットの辺がごそごそしていたような気がする」。家内のポケットにあった目薬を包んだハンカチが、私のポケットに入っていたのだ。

 ほぼ同時に「あっ、あのおじさん!」。想像するに、大声でイタリア語で話し掛け、通じていないのは外国人旅行者とみて、家内のポケットをまさぐり金目の物でないと知る。隣の夫らしい男(私)のポケットに入れ換えた。この大胆さ。私たちは決して財布など貴重品はポケットに入れることはないので、海外旅行で被害に遭ったことはない。それにしても、この一件には恐れ入りました。

 市内を二分する下町のスパッカナポリで装飾品を買った。店を出る時、店員から「袋から決して購入品が見えないようにしてください。ひったくられますから。ひどい場合は女性が首に掛けているネックレスまでむしり取ってけがまでさせるのです」と言われた。

 ローマに戻る朝、ナポリ駅でもこんなことがあった。タクシーから降りて列車の確認をしていると、駅員と同じ帽子と服の鉄道OBらしき男が近寄ってきた。「どこに行くんだね。ローマか。ついて来なさい」。利用者のためにボランティア精神を発揮しているのだ、と日本流に考えた。

 甘かった。私たちが荷物を列車に乗せると、お金を要求したのだ。それも「100ユーロ(1万4000円=当時)」。「エッ」と私。法外な要求に「冗談じゃない。ここまで先導しただけではないか」。間もなく出発時刻だ。押し問答の末、10ユーロを手渡すと、ぶつぶつ文句を言いながら立ち去った。これを見ていた乗客は「あれで十分だ」と言ってうなずいた。

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ナポリのシンボル「卵城」で知り合った地元の家族と筆者(左)
 
私の海外交友記