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02 ベローナ(イタリア) 結婚成就の都市伝説

02-kaigai-0320map.jpg イギリス人劇作家シェークスピアの代表作『ロミオとジュリエット』の舞台は、イタリア中北部の町・ベローナだ。シェークスピアはイタリアに残る秘話をリメークしたのだ。この悲劇は日本でも知られているが、教科書から古典が消えつつある近年は、悲しいかなストーリーを知らない若者が増えている。

 14世紀初頭。ベローナにはモンタギュー(モンテッキ)家とキャプレット(カプレーティ)家という著名な貴族がいた。この両家は血生臭い敵対関係にあった。キャプレット家が毎年催す仮面舞踏会に、町中の貴族を招いた。そこにモンタギュー家の息子ロミオも仮面を着けて友人と来ていた。当時20歳で、町で最もハンサムで礼儀正しい青年だった。彼はその性格故、一家に非難されることはなかった。

 そこで美しい娘に一目ぼれする。キャプレット家の家主の娘ジュリエットだと、後で知る。彼女もロミオに甘美な喜びを感じた。彼女のバルコニーでのロミオへの独り言を、ロミオは立ち聞きしてしまう。恋の炎は燃え盛るばかりだ。

02-kaigai.jpg しかし、これが激しい恋の始まりであると同時に、不幸への序章でもあった。両家の敵対関係が和むことはなく、彼女に縁談話が持ち上がる。ジュリエットは仲の良いロレンツォ僧侶の提案で、42時間仮死状態になる薬を飲む。死んだことになり、墓場へ。ところが僧侶がロミオに送った手紙は届かず、柩の彼女を見て彼は命を断つ。薬が切れて生き返った彼女も彼の後を追う。この二人の不幸を経て両家は和解するという結末だ。シェークスピアは「人間とは愚かなものよ。大きな犠牲を伴ってやっと大切なものに気付く」と訴え掛ける。

 ベローナの北東、駅からバスで10分のカッペラ通りにジュリエットの家はある。エルベ広場のすぐそばだ。ブロンズの像とバルコニーを一目見ようと観光客が毎日押し寄せる。門を入るとすぐに、細身のジュリエットの像が正面に見える。見学者はジュリエットと記念写真を撮ろうと順番待ちだ。その右胸はピカピカ。まるで善光寺のびんずる像のようだ。右胸を触ると幸せな結婚ができるという都市伝説があるそうで、老若男女を問わずやたらに触っている。

 すぐ右手にはバルコニーがある。映画などで見るのと比べると、ずいぶん小さい。カップルはバルコニーとその下で愛を交換するポーズを取っている。私たちも2階に上がる。家内に「バルコニーにいて下から写真を撮ってやろうか」と言うと、「この年で恥ずかしい」と拒まれた。

 中には「ロミオさま、ロミオさま! あなたはなぜロミオさまでいらっしゃいますの?」シェークスピアの戯曲の有名なせりふを語るアメリカ人がいた。日本では、歌手の布施明と結婚したことのあるオリビア・ハッセーのジュリエット役が記憶に残る。ロミオの家もすぐ近くにあるが、私邸で非公開だ。
(2010年3月20日号掲載)