記事カテゴリ:

12 エトルタ(フランス) 美しい奇岩の波食海岸

12-kaigai-0807map.jpg 日本人は印象派の画家が好きだ。マネやルノアール、ドガ、セザンヌ、シスレー、ゴッホやゴーギャンもこのジャンルに入る。

 彼らの中でも、大作「睡蓮」で知られるクロード・モネ。彼はパリの北西へ特急で2時間のル・アーブルの町で成長。ここで"印象派"の名前が付くきっかけとなる「印象・日の出」(パリ・マルモッタン美術館蔵)を描いた。

 そこからさらにバスで北へ30キロ、ボカージュと呼ばれる畦畔林で囲まれた畑地が見えてくる。田畑に家畜などが侵入するのを防ぎ、強い西風から守るための独特の光景だ。さらに1時間余りで"ノルマンディー随一"とうたわれる美しい海岸に出る。エトルタだ。

 この左手にアバルの崖があり、波が浸食した白亜のアーチと海から突起したような"針の岩"が見える。アルセーヌ・ルパンが登場する『奇岩城』(モーリス・ルブラン作)の舞台にもなった。

12-kaigai-0807.jpg ここは、マネの描いた「エトルタの夕焼け」の舞台である。2008年の元日にこの海岸を歩いた。風景の素晴らしさもさることながら、海岸は砂浜ではない。ゴルフボール大の玉砂利だ。波打ち際に立つと、カラカラと砂利の引く音が響く。日本人にはなじみのない音だ。

 遊歩道にある標識に観光客が群れている。ここでモネが絵を描いたという看板もある。アバルの崖を登ってみる。標高差は80メートル。上は平らでゴルフ場になっているのに驚いた。眼下の"針の岩"がこちらをにらんでいる。さらに左手には別の波食された奇岩が現れた。

 向かいの北東側のファレーズ・ダモン(上手の断崖)の中腹には教会が遠望できる。観光客はそれぞれ、教会をバックに記念写真を撮っている。「シャッター押してくれませんか」と何人から頼まれたことだろう。デジカメが多い。その時はフィルムカメラしか持っておらず、フィルムが終わってしまったことを悔やんでも後の祭り。ひたすら他人の写真を撮る羽目になった。

 この町は、カキの養殖でも知られる。地元の海鮮レストランで魚介類の昼食をとった。隣の席の夫婦はスコットランド人で、近くのオンフルールでバカンスを楽しんで立ち寄ったという。やはり貝料理を楽しんでいる。私たち夫婦は少し豪華にカキとエビの盛り合わせを注文した。

 フランスのカキはやはりうまい。全くカキが食べられなかった息子が、かつてパリで生ガキを5個平らげたのを思い出した。そういえば、東北地方のカキが生育不良の危機に陥ったとき、フランスの養殖方法を参考に立ち直ったことを思い出した。海に流れ込む川の水と、それを生み出す森の存在がキーポイントだった。やはり、自然環境は"連鎖"なのだということを痛感させられた。
(2010年8月7日)