
筆者の曾祖父は近くの横町(善光寺門前)で家具屋を営み、分家した祖父は権堂町で製材屋をしていたから、商売の神様・えびすさんの信者だった。市内で商売をしている人なら、大方が信者であろう。
第2次大戦後数年、みんな食うや食わずのころ、祖父の肩車で初めて11月のえびす講の際、同神社に参拝した。
狭い参道に屋台が並び、まるで縁起物の熊手でできたトンネルをくぐるようだった。大きな熊手を買ったお客には、店主によるシャンシャン手拍子のご祝儀がサービスされる。
ところが祖父の買った熊手はうちわぐらいの小さなものだったので、ご祝儀はなかった。家に帰って、神棚の柱に熊手を縛り付けている祖母に思わず「もっと大きなのがいいのにー」と不満をぶつけた。「そうだね。来年はもっと大きなのにねえー」と祖父に笑い掛けた。
翌年から我が家の熊手は次第に大きくなったと記憶する。これも、えびす様の御利益なのだろう。
今夏、ふらりと立ち寄り境内を探索したところ、樹齢100年は超える赤松の巨木があるのを発見した。写真のように数値グラフでいえば、見事な「右肩上がり」だ。
思い返せば、就職してから定年まで30年余、給料もボーナスも右肩上がりだったのが、今の定年後間もない世代の人生航路だった。
「え! うっそー」と若者は言うだろうが、本当なのだ。給料は良くて横ばい、賃下げも当たり前という昨今の若者たちが気の毒でならない。
だが、運も気力も信じる人は救われる。私は今夏、西宮神社で右肩上がりの松をなでさすったところ、「サマージャンボ」3000円が2本当たった。家電販売店でカードを差し込んだら300ポイントが当たって、またびっくり。これが西宮神社は御利益がある-と私が信じている次第だ。
(2009年9月5日号掲載)