記事カテゴリ:

091 桐原牧神社〜人気高まる神馬のわら駒

91-rekishi-0306-02.jpg 「桐原牧神社のわら駒(うま)が欲しいのですが」

 「神社の場所は? 参拝すれば抽選で頂けるとか」

 春季大祭で配られるわら駒人気は年々、高まるばかりだ。

 いわく...「子孫繁栄、健康に豊作祈願」「応接間の棚の飾りにちょうどよい」「お父さんが元気になる」「男衆は奮起して出世する」...などなど。「御利益抜群」という競馬ファンまでいる。

 人気の理由はスタイル、デザインにある。写真下のように"奔馬の勢い"で雄の象徴がたけだけしく、ほほ笑ましい。昭和天皇・皇后や皇太子時代の今上天皇・皇后が信州来訪の折には神馬(じんめ)として献上されている。2005年には皇太子殿下へ親子馬がプレゼントされた。

 稲わら数条で編み上げる技術はなかなかのもの。東京や関西の展示会で制作実演をしたところ人気爆発で、民芸品として評判が確立した。

91-rekishi-0306-01.jpg 神社は北長野通りのホームセンター「本久デイツー」の北側住宅地にある。狭い昔の農道をたどり着くと、社殿に「敬神愛馬」の大看板が掲げられており、立派な馬の青銅像がある=写真上。

 由緒・伝承では「桐原の牧は名馬の産地で、奈良時代から都に献上された...」というが、史料にある「信濃十六牧」に入っていないのが不思議だ。「官牧である吉田の牧に連なる私牧だったのでは」と湯福神社宮司の齋藤安彦さんは推測する。

 「江戸時代に神職だった京都の吉田家から牧神社の称号を頂いているので、牧の名残があるのかも」と、年明けからわら駒作りに励んでいる近くの中沢信雄さん。なんと1体作るのに4時間もかかるという。

91-rekishi-0306map.jpg 中沢さんのほかにも、桐原牧保存会の10人余が自宅で製作にいそしむ。本来は地元農家の豊作祈願の奉納物だった。それが神社でお祓いを受け、魂を入れた神馬が近隣からの参拝者に授けられるというゆかしい伝統行事になった。

 春季大祭は3月8日(月)、わら駒の抽選と頒布は10時から。
(2010年3月6日号掲載)

 
足もと歴史散歩