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095 臥雲院 〜深山に「西山随一」の大寺

95-rekishi042401.jpg 「月に眠り雲に臥す山中の名刹700年の歴史を秘めて-」が、この寺のキャッチフレーズだ。眠月山臥雲院は「西山随一」の大寺といわれる。

 長野市街から県道長野大町線で中条に入るとすぐ、トンネル入り口に「臥雲院はこちらから」と大きな案内板がある。これに従って左折して進めば、迷うことはない。1車線の登坂道で、ぽつりぽつりと人家があるのみ。つづら折りを5キロほど上り、やっと伽藍が見える所まで車でも30分近くはかかる。

 総門をくぐると、境内も広いが、本堂もでかい=写真上。お仏壇の前で幼稚園の運動会ができそうだ。「大寺」はうそではない。善光寺は別にして、近在では松代の長国寺本堂に並ぶのではないか。

95-rekishi042402.jpg 何よりの見ものは、門前に立つ「地滑り三本杉」だ=写真下。江戸末期、1847(弘化4)年の善光寺地震の際、200メートルほど上の高台にそびえていた杉の木が立ったまま滑り落ち、40度ほどに傾いたまま着地したといわれる。

 それ以来、しっかりと斜面に根付いている。幹が地上数メートルの所で3本に分かれているのが名の由来で、旧中条村の天然記念物だった。幹の内部が洞になっているが、樹勢は隆々、生命力にあふれた巨木だ。

 寺伝によれば、鎌倉五山の第1位・建長寺の高僧がこの深山幽谷に分け入り、霊感を得た場所とされる。善光寺地震の時には、七堂伽藍が火を噴きながら谷を4丁(数百メートル)も転落したと伝えられている。

 その大伽藍が復興できたのは、檀家が600軒もあって、西山全体から大町・長野市内に広がり、尊崇を集めているからだ。

95-rekishi0424map.jpg 「臥雲院7不思議」という事象があって、晴天には富士山の影が映る池とか、ふいごのような風穴、落ち葉を一夜で吸い込む塵穴とか、面白い話を聞くことができる。

 住職夫人は、縁あって篠ノ井からここに来たそうだ。末寺も数多く、長野市鶴賀田町の普済寺もその一つ。先年亡くなったピアニスト・羽田健太郎さんの実家の菩提寺だ。話の種が多い名刹といえよう。
(2010年4月24日号掲載)

 
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