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15 オーストリア インスブルック〜盛り上がったチロルショー〜

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 「イン川に架かる橋」という意味のインスブルック。人口は14万人ほど。1998年に長野冬季五輪が開かれたが、それ以前の64年と76年の2度、開催地となった"先輩都市"だ。

 この町のシンボルは黄金の小屋根と聖アンナ記念柱。そして何よりもケーブルカーで行くアルプスの峰々。

 標高1905メートルのゼーグルーベ展望台からは360度の一大スペクタクルだ。インスブルックの町並みが眼下に広がる眺望には、ため息が出る。トレッキングコースもあり、1時間ほど歩いてみる。放牧の羊や高山植物がかわいい。

 この町に来たのは3度目。以前来た時に実現しなかったショー見物が気になっていた。"チローラー・アルペンビューネ"。チロル地方の民族衣装を着てのヨーデルや踊り。そして映画『第三の男』で有名になった楽器チターやハープ、アコーディオンの演奏。呼び物の一つのシュープラットラーは、靴の底をたたきながらユーモラスに踊る。

 さらにもう一つ。楽器と歌に合わせて木を切るパフォーマンスが人気だ。もともとヨーデルは樵(きこり)の間で、魔よけのために伝えられた牧歌的な歌。スイス、ドイツにもまたがるチロル地方独特の民俗文化の一つでもある。

 こうしたショーは、インスブルックの3カ所で行われる。私は郊外にあるグンドルフ一家の舞台に向かった。300人入れる会場は満員。残念ながら私たちは後方の座席だった。前列の大半はアメリカ人のツアー客だ。スタッフによると、最も多いのはシーズンを通して、やはりアメリカ人。歴史の浅い米国では、ヨーロッパの伝統芸能などにあこがれが強いのだろう。開演と同時にノリが良いのもむべなるかな、だ。

 特にシュープラットラーや木を切るパフォーマンスには、館内が一体になって盛り上がった。圧巻はフィナーレ。入場の際に一人一人「お国はどこですか」と聞かれたのが、ここで分かった。来客の国の歌を歌うのだ。日本は「さくら、さくら」だと思っていたら、「幸せなら手をたたこう」だった。隣にいたノルウェー人夫妻が「これなら私たちも知っている」と言って、私たち夫婦の肩をたたいた。
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 翌日、朝食で一緒になった40代の日本人女性2人。ドイツ語はおろか英語も話せないのに、2人だけで東京から来たという。日本でホテルと電車の予約を済ませて来た。トレッキングが目的で、周辺の山を歩き回っているとか。治安が良いこともあるが、日本人男性も見習ってはどうか。男だけでこうした楽しみ方をするのは、あまり見掛けない。日本人は女性の方が度胸がいいのだろう。

 2人の「言葉が不自由だから観光するのにも限界がある」との一言で、お節介ながら前夜のショーの話をした。「ぜひ行きたい」という。早速、ホテルのフロントに話して、その夜の予約を取ってもらった。帰ってきた2人の表情ですぐに分かった。満足そうだった。
(2010年9月18日号掲載)
=写真=観客も一体となったチロルのショー



 
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