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17 オーストリア テルフェス〜Tシャツがカウベルに〜

17-kaigai-1023m.jpg 「オーストリアで子どもに最も親切な村」として国から表彰されたことがあり、「谷あいの村の中で最も日照時間が長い所」としても知られている。人口わずか2000人のテルフェス村に興味を持った私は、21世紀になったばかりの2001年夏に訪ねてみた。

 海抜1007メートル。ドイツ語でタール(TAL)は「谷」を意味する。ツィラータール、エッツタール、カウナータールなど、その名を冠する谷が多い。テルフェスもシュトバイタールにある。インスブルックからシュトバイタール鉄道でトコトコと56分。宮崎の延岡駅から高千穂に向かう日之影線によく似ている。

 駅前からの坂道をスーツケースを押しながら5分。予約していたホルツァーホフが右手に見えた。すると、そこの奥さんが迎えに来ていた。時間も言ってなかったのだが、小さい駅だから宿泊客があると電車が到着するたびに様子を見るのだという。それももっとも、シャレーのような簡素な部屋が6つだけの民宿だ。

 私たち夫婦を2階の一番眺めの良い部屋に案内してくれた。牧歌的な光景で、マリアテレジア・イエローの黄色い教会もすぐそこだ。テルフェスの駅も、時折通る電車さえも見える。ベランダにはサフィニアの花が咲きこぼれていた。

 その日の夕食は「近くの川で釣ってきた」という主人自慢のマスのムニエル。25センチ以上もあった。そのほかに、卵とミルク、チーズとキノコをまぜてオーブンで焼いたものも。郷土料理だという。隣席のドイツ人夫婦は毎年、この宿で夏休みを過ごすそうだ。

17-kaigai-1023p.jpg 翌日、日帰りでシュトバイタールの"のどの奥"に当たるフルプメスには電車で、さらにその上の終点ノイシュティフトへはロープウエーで行った。海抜2900メートルの山頂駅に着くと、8月なのにスキーリフトが動いている。氷河スキー用だ。リフトに乗ると海抜3250メートル地点へ。この時季にスキーをやれるうれしさを感じる。

 ホルツァーホフは2泊だったが、こうした家庭的な宿に泊まるときは必ず日本ならではのお土産を持っていく。この旅では、私のクラスで作ったTシャツだった。女子生徒がデザインした紺の厚手の生地に、表はクラス名の"壱組"を左胸に控えめに染め、後ろには大きく"氷"の文字。なかなか垢(あか)抜けている。これを余分に注文しておいた。

 このうちの2着を宿の夫婦に差し上げた。生地を丹念にチェックした後で「布地がいいね」と奥さん。「早速、あす着てみる。デザインもすてきだよ」と主人。帰り際、お返しのつもりなのか、新品の大きなカウベルをお土産にくれた。運ぶのに苦労したものの、以来わが家の玄関にデンと鎮座している。
   (2010年10月23日号掲載)

=写真=家庭的な民宿の人々と

 
私の海外交友記