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02 「もののけ姫」(1997年) 〜親子で安心して見られる映画は?

 Q 子どもと映画を見るのが楽しみですが、突然、過激な場面が出て来てうろたえます。安心して親子で見られる、感動の映画をどう選んだらいいのでしょう?

 A 過剰な暴力や性的な表現については、レイティング(映画産業委員会組織による鑑賞への段階づけ)というもので、ある程度、予測することができるでしょう。

 米国では1968年から採用された制度で、現在、G(誰でもOK)、PG(子どもには若干の注意が必要)、PG-13(13歳以下の鑑賞には親の配慮が必須)、R(17歳以下の鑑賞には保護者同伴が必須)、NC-17(17歳以下は鑑賞不可)といった区分があります。

 建前として、子どもの鑑賞には親の判断と責任を求めています。ただ、基準は、各文化の価値観の問題を含むので、世界中同じというわけにはいきません。

 日本の場合、昔はもっぱら性表現の制限でしたが、最近では過剰な暴力や価値観についても考慮して4段階になっています。アメリカとぴったり一致するわけではありません。

 例えば、宮崎駿の最高傑作『もののけ姫』(97年)の場合、公開時、日本の映画館にはトトロファンの幼い子どもたちの姿が多く見受けられました。

 しかし、アメリカの指定は、PG-13。エボシ御前にミニー・ドライバー、サンにクレア・ディーンズといった豪華声優陣で制作されたディズニーによる英語版がアメリカでは大きな興行的成功を収めなかった理由の一つは、この指定のせいだったともいわれますが、『もののけ姫』は間違いなく、大人のための映画です。13歳以下の子どもたちには、まず、この作品の構造やメッセージは理解できないと思います。

 私は毎年、大学生たちに見せます。日本の民族的多様性、登場人物として描かれない中心的人物の存在、あるいは環境と開発といった問題を、エミシであるアシタカの視点から読み解き、彼の腕に残った呪いの痕が自分たちの暮らしと繋がっていることを知ると、多くの学生が「ゾクゾクするような知的興奮を覚えた」と感想を書くのです。

 少し、話が横道にそれたかもしれません。もし、お子さんがティーン・エイジャーであれば、親が見たい映画を一緒に見るより、お子さんが見たい映画を一緒に見ることから始めた方がよいかもしれません。映画を親子で語ることの喜びが共有されたら、「次はお母さんの見たい映画を一緒に見よう」と、子どもたちから声が掛かるはずです。
(2009年6月6日号掲載)
 
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