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10 「ラストショー」(1971年) 〜米国人は世界一映画好きなのですか?

 Q アメリカ人は世界で一番映画好きなんですか?

 A 手元の統計は少し古いものですが、映画館の入場者数を単純に人口で割ると、アメリカでは一人当たり日本の4倍から5倍、映画を見ている勘定になっています。この点では、世界で一番というのは間違いではありません。『映画がつくったアメリカ』という題の書物があるくらいですから、アメリカと映画は切っても切れない関係にあると言ってもよいでしょう。

 『武器よさらば』『キリマンジャロの雪』のアーネスト・ヘミングウェーは言うまでもなく、洗練されたSFファンタジーで知られるレイ・ブラッドベリやノーベル賞作家ウィリアム・フォークナーら米国文学を代表する作家たちも、しばしば映画産業で糊口をしのぐことがありました。また、彼らの作品も映画に強い影響を与えてきました。

 クエンティン・タランティーノ監督は若いころ、レンタル・ビデオ店の店員として働き、店の顧客と映画について熱く語り合ったそうですが、一般にアメリでは映画を人生と深く結びつけて語ることが多いようです。そして、映画もしばしば国民と映画の関係について語ります。

 例えば、ピーター・ボグダノヴィッチ監督の『ラストショー』(1971年)です。

 時は1950年代初め、朝鮮戦争のころ。娯楽といえば、プール・バーと一軒の映画館だけというテキサスの田舎町の若者と周囲の大人たちの物語。若き日のティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジス、シビル・シェパードが高校生役で出演しています。

 町の映画館のオーナーは開拓時代の男を感じさせるサム。彼の昔語りは彼を慕う男子高校生を魅了します。しかし、サムの突然の死によって、何かが変わり始め...。やがて、主を失った映画館の最終上映(ジョン・ウェイン主演の西部劇『赤い河』)が行われようとするころ、若者たちはそれぞれの愛と喪失の経験を経て、大人への道を歩み始めるのです。

 サム役を演じるのはベン・ジョンソン。ご存じジョン・フォード監督の名作西部劇で見事な乗馬技術を見せつけてきた男優です。いかにもアメリカらしい、映画を通して時代の移ろいを感じさせるこの映画は、大人の鑑賞に堪える青春映画の秀作でもあります。

 もちろん、映画が映画について語るのは、アメリカに限ったことではありません。でも日本映画がアメリカ映画を語るように、アメリカ映画が外国映画を語ることはまれです。結局、アメリカ人は「アメリカ映画」が好きなのかもしれません。
(2010年2月6日号掲載)

『ラスト・ショー』1980円 発売・販売元/(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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