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13 「ゴジラ」(1954年) 〜これからはみんな3D映画に?

 Q 最近、3D映画がなにかと話題になりますが、これから映画はみんな3Dになっていくのでしょうか?

 A テクノロジーの未来を予測するのは困難ですが、過去を知ることは可能です。3D、つまり立体映画の歴史は、映画の歴史とほぼ同じくらい長く、既に20世紀の初めからありました。主流にはなりませんでしたが、3Dが大流行した時期は過去にもあったのです。

 例えば、『肉の蝋人形』(1953年米国)は、日本でも偏光フィルターメガネで見るカラー立体映画として封切られ、評判となりました。50年代の前半は、立体映画に限らず、SFやホラーのジャンルで次々に名作が生まれた時期でもあります。2012年にハリウッド製3Dの新作公開が決まったと報じられた「ゴジラ」も、そのころに誕生しました。

 ゴジラの登場する映画はこれまでに30本以上作られていますが、必見はオリジナルの『ゴジラ』(本多猪四郎監督、54年、東宝)です。必見である理由は、日本映画には珍しく、はっきりとした社会的メッセージを持つ映画だからです。

 『ゴジラ』には、ビキニ環礁の水爆実験のために被爆し、再び日本人が核兵器の犠牲となった第五福竜丸の悲劇が重なっています。

 伊福部昭作曲の有名なテーマ曲とともに、突然、海から現れる怪獣ゴジラがもたらす恐怖と不安。それは、人間の罪や愚かさの深淵(しんえん)からもたらされるものなのです。円谷英二による特撮技術は現在のCG技術に比べれば幼稚なものに思えるかもしれません。しかし、圧倒的な力で人間の傲慢を踏みつぶすゴジラの姿が、モノクロ画面の逆光の中に黒々と浮かび上がる時、観客は『ジュラシック・パーク』のTレックスとは違う、深い悲しみをたたえた、一種の神々しさとでもいうようなものを感じるのです。

 日本での公開から2年後、米国で公開された『ゴジラ』は米国俳優の演技を加えて再編集された全く別の映画でした。現在の3D映画のメガネの煩わしさや、映像酔いの問題は別にしても、ハリウッドがCGを駆使して製作する3Dのゴジラは、果たしてオリジナルのもつメッセージ性や陰翳を立体化できるでしょうか?

 今月、ニューヨークで核不拡散再検討会議が開かれます。日本の被爆者の方々も現地へ出向き核兵器の全廃を訴えると聞きました。「核なき世界」を提唱するオバマ大統領が鳩山首相らとともに、何を実現するのか、ゴジラが海底からじっと見詰めている。私にはそんな場面が浮かんできます。
(2010年5月1日号掲載)

『ゴジラ』(昭和29年公開)発売・販売元/東宝 5985円 ブルーレイ発売中
 
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