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14 「カラー・オブ・ハート」(1998年) 〜昔見た白黒映画がカラーでTVで放映されていましたが??

 Q 昔見た白黒映画がカラーでテレビ放映されていました。一体どうなっているのでしょう?

 A もし、ご記憶が確かであれば、それは着色されたということです。コンピューターによるデジタル化で、着色はとても容易になりました。スティーブ・マックィーン主演の『拳銃無宿』のような往年の人気テレビ番組のカラー化は一般的です。いま白黒画面は苦手という人が結構多いのです。

 ただ、映画の場合、著作権者が着色を認めるとは限りません。着色拒否の最も有名な例は『市民ケーン』です。雪舟の水墨画に彩色するようなもので、完成度の高い作品ほど、カラー化によって、その芸術性が失われる可能性が高くなります。

 本格的カラー映画の登場は『風と共に去りぬ』(1939年米国)ですが、初期のテクニカラーは三原色それぞれを別のフィルムに焼きつける、とても手間のかかる高価なものでした。日本も含め世界中でカラーの長編映画が製作されるようになるのは、1950年代以降のことです。

 1950年代、テレビはまだ白黒の時代で、『パパは何でも知っている』のような健全娯楽番組が放送されていました。そんな白黒テレビドラマの世界にデジタル時代の高校生たちが迷い込んでしまう物語が、1998年のアメリカ映画『カラー・オブ・ハート』(ゲイリー・ロス監督)です。

 トビー・マグワイアとリース・ウィザースプーン演じる男女の双子が主人公。予定調和的ドラマの世界に入りこんでしまった2人は、完全無欠な白黒世界に色彩を持ち込んでしまいます。すると白黒の世界のあちらこちらに色づいたものが現れ、白黒の世界の秩序がほころびて、ウィリアム・メイシーとジョアン・アレン演じる中年夫婦の間にもカラーをめぐる秘密が生じてきます。

 変化に周章狼狽し、白黒の世界の秩序を守ろうとする大人たち。色彩への変化を素直に受け入れようとする若者とその共感者たち。両者の対立は、アメリカの人々の変化と多様性への対応の戯画ですが、我々自身の姿かもしれません。

 興味深いのは、カラーの画面より、白黒画面により新鮮さを感じる観客が少なくないことです。あふれ返る色彩よりも、白黒画面の中から次第に色が立ち現れてくるところに妙味があるのです。白黒画面の美しさの再発見につながるかもしれません。
(2010年6月5日号掲載)


 
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