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17 「死者の書」(2005年) 〜アニメはマンガ映画と違う

17-cinema-0904p.jpgQ アニメって、マンガ映画のことではないのですか?

A 違います。映画は、普通、動いているものを一コマずつ静止画として撮影して、連続で投影することで動きを再生するわけですが、アニメは静止しているものを撮影して、新たに動きをつくり出して見せるものです。

 静止しているものは、平面の絵やマンガの場合もあれば、立体物の場合もあります。

 例えば、日本でも人気の高い『チェブラーシカ』。ロマン・カチャーノフ(1921-93)による映像化は人形アニメですね。彼の創造した人形、チェブラーシカやゲーナ、シャパクリャクは本当は動きませんが、アニメでは表情に富み、まるで生きているようです。

 カチャーノフの弟子、ユーリ・ノルシュテインは、現代ロシアを代表する芸術家ですが、セル画によるアニメではなく、切り絵を巧みに組み合わせる独特の技術で不思議な物語世界の雰囲気をつくり上げます。映像の詩人とも形容される彼の作品でのお薦めは、作品集にも収められた『話の話』(1979年)です。

 飯田市に人形美術館がある川本喜八郎さん(8月23日死去)もカチャーノフと親しかったことが知られています。川本作品として、1本をあげるなら、やはり『死者の書』(2005年)でしょうか。

 ところは平城京、大伴家持らが生きた時代。ある日、ヒロインは二上山のかなたに俤人(おもかげびと)を見ます。やがて、その俤と重なる悲劇の皇子、大津皇子の魂との出会いが、彼女の運命を大きく変えていく...。

 人形の髪の毛1本1本の動きに至るまでのこだわりには、ただただ圧倒されます。

 こうしたロシアや日本の作品には、それぞれの民族が培ってきた文化的背景が読みとれて興味深いものですが、各国の人形アニメについて語るとき、忘れてはならない民族の伝統があります。実は、川本・カチャーノフをつなぐ糸もそこにありました。それはチェコの人形劇の伝統、そしてイジー・トルンカ(1912-69)の存在です。

 人形劇団の主宰者からアニメ界に転身し、「チェコ人形アニメの父」と呼ばれるようになった人物です。東西冷戦時代には「東のディズニー」と呼ばれたほどの国際的評価を得た作家です。注目すべきことは、彼の作品は子どものためではなく、大人のために作られていたこと。1965年制作の『手』を鑑賞した後、あなたはしばし沈黙し、深いもの思いにとらわれるはずです。そう、アニメは大人のものでもあるのです。
(2010年9月4日号掲載)

=写真=『死者の書』発売元/ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント 3990円

 
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