記事カテゴリ:

18 オーストリア ザルツブルク〜あこがれの映画の舞台へ〜

18-kaigai-1030m.jpg 私事で恐縮だが、横浜で生まれ育った私が親類もいない信州に来たのには訳があった。学生時代に見た『サウンド・オブ・ミュージック』。信州への思いは、この1本の映画とオーバーラップ(二重写し)した。主演のジュリー・アンドリュースにあこがれ、シラカバや草原の自然にもあこがれた。社会人になって初めての赴任地が諏訪で、そこには白樺湖や霧ケ峰があった。

 サウンド・オブ・ミュージックの舞台は、オーストリア西部のチロル地方、ザルツブルクだ。モーツァルトの生まれ故郷として知られる。ドイツ語で「塩の城砦(じょうさい)」という意味だ。塩は貴重品であったことから、1200年もの間、大司教領として繁栄した"華麗なる都"でもある。

 映画の舞台になったザルツカンマーグート、「ドレミのうた」を歌ったミラベル庭園、ホーエンザルツブルク要塞(ようさい)を望むメンヒスベルク。どれも一見の価値がある。

 3回訪れたこの美しい町で、映画のシーンと比べて予想外だったのは、ガジーボと呼ばれるあずまやの小ささだ。このガジーボはフォン・トラップ大佐の居住していたレオポルツクローン宮殿にあった。長女リーズルと郵便配達夫のロルフが踊ったシーンや、トラップ大佐がマリアにプロポーズした場所でもある。

 15年ほど前、このあずまやに地元の若者らがたむろして、酒を飲んでは大騒ぎしたことから、別のヘルブルン宮殿に移された。

 ここで若い二人が歌った歌は「もうすぐ17歳」。夜の庭で一つ年上のロルフが兄貴分の気持ちで、恋心を抱くリーズルを抑えるのに躍起。「あなたが頼り」と迫り、初めてのキスをしてもらいリーズルが感激するシーンは有名だ。

18-kaigai-1030p.jpg 「こんな狭い所で踊っていたんだ」-訪れた人が口々にそう言っていた。それが、カメラワークなのだろうか。中には入れなかったが、マリア役のジュリー・アンドリュースが「何か良いこと」を歌い、クリストファー・プラマー演じるトラップ大佐の告白を受け入れるシーンが思い起こされる。この歌は、この映画のために書き下ろされた。

 ザルツブルクのメーン・ストリートは、ゲトライデ・ガッセ(通り)。中世の面影を残しつつ、華やかな様相を醸し出している。品の良いオーストリアを代表するのに十分だ。

 ここでは毎夏7月末から8月いっぱいの5週間、ザルツブルク音楽祭が開かれている。モーツァルトを記念したイベントだ。チケットを入手するのはウイーンフィルと同様に大変だが、入場にも男性はジャケットを、女性はワンピースを着るのが無難というほどおしゃれに気を配る。

 モーツァルトといえば、レジデンツの前の広場にこの天才作曲家のブロンズ像があり、彼が通ったカフェ「トマゼリ」もある。訪れるたびに立ち寄るが、いつも満員。ケーキの種類が多く、ざっと数えて50種類はあろう。甘過ぎず品があり、「オーストリアのケーキは世界一」というのが、外国人旅行者や衆目の一致するところだ。ここでは、モーツァルトをイメージしたト音記号のショートケーキが人気の品の一つ。映画は公開されてもう半世紀近くたつのに、色あせない不朽の名作だ。
 (2010年10月30日号掲載)

=写真=予想外に小さかったあずまや
 
私の海外交友記