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19 「マジェスティック」(2001年) 〜ボックス・オフィスって何? 

19-kinema-1106.jpg Q よく「ボックス・オフィス」という言葉を耳にしますが、何ですか?

 A 「BOX OFFICE」とは、文字通り、箱形の小さな事務所を指しました。つまり、劇場の切符売り場です。「ボックス・オフィス・ヒット」などという場合は、ボックス・オフィスが切符の売り上げを示しています。映画は産業なので、批評家の評価や受賞歴よりも興行成績=ボックス・オフィスが最高の勲章となるのです。

 ボックス・オフィスで思い浮かぶ映画に、『マジェスティック』(2001年)があります。
 米国の小さな町で助けられた記憶喪失の男(ジム・キャリー)を、町民は戦地で行方不明になった英雄だと思い込みます。息子を失って気力を失っていた映画館主(マーティン・ランドー)は、生還した息子と共に長らく閉ざしていた映画館マジェスティックの再開を決意するのですが...。

 町に唯一の映画館の復活が、主人公と戦争の傷を負った町の人々を変えていく様子が、映画全盛のころへのノスタルジアとペーソスたっぷりに描かれています。ただ甘いだけの映画ではありません。現代アメリカの暗い記憶、マッカーシズムへのハリウッドの屈従と抵抗が皮肉たっぷりに描かれます。1950年代に活躍したジェイムズ・ホイットモアの懐かしい顔も見られます。

 ジム・キャリーが笑顔で迎えるボックス・オフィスに行列し、しゃれたホールを通って、たっぷりとバターのかかったポップコーンを手に座席に着き、しばし映画の世界に酔った後、あれこれと語り合いつつ家路につく幸福な人々。

 監督フランク・ダラボンは、興行的成功とは別の特別な思いで描いたと語っています。
 ハンガリー動乱の難民の子として生まれたダラボン監督は、常に映画を希望として描きます。『グリーンマイル』では、看守たちが一人の死刑囚のために開く映画会。『ショーシャンクの空に』の中の映画のポスターは自由への扉でした。

 昔ながらのボックス・オフィスの残っている劇場は世界でも少なくなりました。でも長野市の場合、権堂アーケードを歩いてふと横をみると、路地の向こうに懐かしい切符売り場が見えるはずです。中心市街地に、最新設備のシネコンと懐かしい映画館の両方を持っている長野市民は本当に幸福だと思います。

 今年のNAGANO映画祭では11月14日(日)13時から、その幸福と映画について語り合う集い『映画館のある風景 新・映画館主義!』(会場・東町のかねまつ、定員80人)が開かれます。多様な映画館がある幸福と映画文化を守り育てる知恵が分かち合われることでしょう。
(2010年11月6日号掲載)

=写真=『マジェスティック』ワーナー・ホーム・ビデオ 2625円
 
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