記事カテゴリ:

19 ブレーメン 〜童話「音楽隊」で人気者に〜

19-kaigai-1113m.jpg ドイツにはさまざまな"街道"がある。一番人気の「ロマンチック街道」から「古城街道」「エリカ街道」「アルペン街道」など。

 その一つに「メルヘン街道」がある。南の基点がハーナウで、カッセル、ゲッティンゲン、ハノーファーを通り、終点のブレーメンに至る全長約600キロ。その間には63の町がある。

 ハーナウはグリム兄弟の生誕地だ。シュバルムシュタットには『赤ずきんちゃん』、ザバブルクには『いばら姫』、そしてハーメルンにはご存じ『笛吹き男』。これらはグリム兄弟の創作ではない。地方のフォークロア(民間伝承)を、兄弟が柔らかなタッチでまとめた。

 第2次大戦で連合軍に徹底的に爆撃されたハノーファーとともに、北の終点ブレーメンを訪ねた。『ブレーメンの音楽隊』の舞台である。この町は1358年にハンザ同盟に加わって栄えた。

 駅から歩く道々に、海外貿易で繁栄した名残の店や建物、しゃれた彫刻や商店が並ぶ。市庁舎前のマルクト広場には8メートルもあるローラントの像が立つ。ローラントは伝説上の英雄で、正義と自由都市の象徴として北ドイツでは14世紀ごろから建てられた。

19-kaigai-1113p.jpg 市庁舎の横にあるのが音楽隊の像だ。台座のすぐ上にロバ、その上に犬、猫、オンドリ。よく知られた童話だが、復習してみよう。

 -年をとって不用になり、主人に殺されそうになったロバと犬、猫、オンドリは、ブレーメンに行って音楽隊に入るため一緒に旅をします。ある夜、小屋の中で盗賊たちが酒盛りをしていました。空腹のロバたちは一つになって叫び、一斉に窓から飛び込みます。びっくりした盗賊は森に逃げていきます。残ったごちそうをたっぷり食べた4匹は寝床へ。

 様子を見にきた盗賊の手下は、猫に引っかかれ、犬にかみつかれ、ロバにけ飛ばされます。オンドリには耳元で大声で鳴かれたため、戻った手下は「あの家には魔女がいる」と話します。それ以来、盗賊たちは二度とこの家には近づかなくなりました。4匹はその家で、いつまでも仲良く暮らしました-。

 この話から4匹はブレーメンには到達していない。それでも、この話はブレーメンと結び付き、あたかも町に着いたかのようにマルクト広場の片隅に像が立っていて、市民や観光客の人気者だ。

 2004年秋、中野西高校の英語科3年生は受験を控えて忙しいさなか、英語劇に挑んでいた。それが『ブレーメンの音楽隊』だった。手製のかぶり物や小道具。翌年度の同校英語科への入学説明会で、中学3年生と、同行の親たちに向けた3年生によるプレゼンテーションだった。

 このパフォーマンスが、入学希望者の数を左右する。生徒たちの熱演は中学生らから拍手喝采(かっさい)を浴びた。翌年度の英語科入学希望者は例年より大幅に増えた。
(2010年11月13日号掲載)

=写真=市庁舎の横にある音楽隊の像