記事カテゴリ:

20 ドイツ フュッセン 〜日本ファンの老夫婦が歓待〜

20-kaigai-1120map.jpg フュッセンへは2002年が3度目の訪問だった。ロマンチック街道の北の拠点がビュルツブルクなら、南の拠点はフュッセンでハイライト地点でもある。それはディズニーランドにあるシンデレラ城のモデルにもなったノイシュバンシュタインがあるからだ。

 ノイシュバンシュタインは、ドイツ語で「新しい白鳥の(石の)城」という意味。日本人が時々間違えて言う"ノイシュバインシュタイン"は「新しい豚の城」になってしまう。向かいの丘にあるホーエンシュバンガウ(「高台の白鳥の里」の意)で育ったルードビッヒ2世が、あこがれの音楽家ワグナーのオペラのために造った。財政破たんを招き、志半ばでの不審死により未完成だが、今ではこの町の"ドル箱"になっている。

 今回はミュンヘン駅から鉄道で向かった。ヨーロッパアルプスが近づく終点がフュッセン。今回の楽しみは、大の日本ファンの老夫婦(元薬剤師)の宿に泊まることだ。事前の情報を元に、国際電話で予約しておいた。

20-kaigai-1120p.jpg エリザベスさんは今では90歳だが、日本人と知ると電話の向こうで「ヤーパン、ヤーパン(日本)」と歓迎ムード。日本とドイツは相性が良い。第2次大戦の日独伊三国同盟の影響があると聞く。それ以上に、約束や時間を厳守するゲルマン魂と日本人気質が似ていることもあるのだろう。

 フュッセン駅から歩いて5分。インターホン越しに到着を告げると「オー、トーカイ、ヤーパン」とおばあちゃんの声。解錠されて2階に上がる。満面の笑み。五つ年上の夫、ビルヘルムさんも出迎えてくれた。

 居間に入ると、小窓から小さな城が見える。「この景色が自慢なのよ」とドイツ語交じりの英語で説明してくれた。紅茶とスナック菓子を頂きながらテレビのスキー・ジャンプを見ていると、また「ヤーパン」の声。日本人選手が出場している。盛り上がってきたところで、自分たちの部屋に戻った。

 夫婦にあげようと思って、はるばる日本から持参したのは袖なしのはんてん。二人とも気に入ったらしく、ずっと着たままだ。翌日、同行した息子にバスで"新白鳥城"を見せて戻ると、待ちかねたように「お茶においで」との誘い。家内は「おばあちゃんは私たちが待ちきれないようね。うれしいけど」と笑う。しっかりはんてんも着ている。

 「これは娘たちがお祝いに撮ってくれたビデオよ」とスイッチを押した。教会やレストランで、家族がお祝いしている光景が30分。年を取ると、こうしたことが至福なのは古今東西同じようだ。私たちが興味深そうに一緒に見ていると、喜びが増幅されるらしい。

 おばあちゃんの勧めで、近くの湖に白鳥を見に行った。パンを持った我々の姿を見つけると、2羽が飛ぶように泳いできた。岸辺まで上がり、パンを持つ息子のお尻を突っつき催促するのがこっけいだった。やはりここは"白鳥の里"だ。
(2010年11月20日号掲載)
=写真=はんてんを着てご機嫌なエリザベスさん(右)


 
私の海外交友記