記事カテゴリ:

23 イギリス ロンドン 〜衝撃のマダム・タッソー〜

23-kaigai-1225p1.jpg 霧の都ロンドンには2度行った。11年前の1回目は長野市内の高校生と社会人の13人と。最も印象的だったのは「マダム・タッソー(ろう人形館)」だった。

 等身大の世界の著名人が、ろう細工の特殊技術によってよみがえる。ビートルズ、プレスリー、シュワルツェネッガー、ベッカム、日本人では千代の富士や吉田茂。あまりにもリアルだったのがダイアナ妃。王室のコーナーから外され、ポツンと一人?立っている姿はかわいそうだった。

 マダム・タッソーはアムステルダムやニューヨークなど世界9カ所にあり、それぞれのお国柄に合わせて趣向を凝らしている。香港ではテレサ・テン、ニューヨークではオノ・ヨーコ、アムステルダムではゴッホやアンネ・フランクなど。

 しかし、何といってもロンドンの人形館が最も精密かつリアルだ。イギリス人は猟奇的な展示を好むらしい。かつては"切り裂きジャック""ガイ・フォークス"など残酷な展示やコーナーを設け、にぎわっていた。

 マダム・タッソーことマリー・グロシュルツが生きたのは、革命前のフランス。母が家政婦をしていた先のカーティス博士の影響で、ろう細工の技術を修得。ボルテールらのろう人形を製作して名声を得ていた。フランス革命では、恐怖政治で投獄。ギロチン刑寸前に難を逃れた。イギリスに渡って巡回展示しているうちに、1835年に常設館を設け今日に至っている。

23-kaigai-1225m.jpg 2度目は、中野西高校のクラス生と行った6年前。時代の変化に敏感で、当時の人気者のサッカー選手や歌手、俳優などに"更新"されていた。この時、ロンドンを訪問したのには別の理由があった。
 当時、同校に常駐していたALT(外国語指導助手)のマリッサ・ウイラーさんは、小柄だがパワフルで気遣いも素晴らしい。ストイックだが明るい性格で教師や生徒はすっかりなじんでいた。徹底したベジタリアン(菜食主義者)でもあった。

 そのことを一度尋ねたことがある。答えは「今、日本を含めて過剰なほど肉食が進み、アメリカでもアマゾンの熱帯雨林を伐採して牧場に替えている。地球の温暖化や砂漠化が進んでいる現状に、歯止めをかける手助けをしたいの」。彼女はロンドンの大学でもう一度勉強する-と言って、惜しまれつつ2年間で退職した。

 そんな中、クラスの有志でマリッサ嬢に会いに行こうという話が持ち上がった。2004年暮れ、20人を連れてロンドンへ。彼女とは大英博物館で待ち合わせた。生徒との再会後、彼女は館内のガイドを務めてくれ、夕食やお茶まで生徒と楽しんで帰宅した。

 毎年、多くのALTが県に採用される。1年で去る人、3年以上残って信州をこよなく愛してくれる人、人それぞれだ。これまで20人以上の男女ALTに会ったが、マリッサ嬢は生徒に大きな影響を与え、今は母国アメリカで幸せな家庭を築いている。ロンドンではマダム・タッソーと共にマリッサ嬢との思い出が、23歳になった若者たちの心に深く刻まれているはずだ。
(2010年12月25日号掲載)
=写真=本物そっくりのビートルズとダイアナ妃のろう人形


 
私の海外交友記