記事カテゴリ:

01 「モロッコ」(1930年) 〜洋画は字幕か吹き替えか

 Q シネコンでデートしました。でも、見たい映画に字幕版と吹き替え版があって、どちらを見るかで口論になり、別々に見るはめに。洋画は字幕か吹き替えか、どちらを見ればいいんでしょう?

 A 初回から、なかなか難しいご質問です。
吹き替えとなると、声の演技が入れ替わるわけですから、印象がまるで変わってしまう可能性があります(常にオリジナルがよいとは限りませんが)。

 一方、日本語字幕には1秒4文字という制限があり、情報量が極端に限られてしまいます。大量の文字を読まなければならないと、画面の情報が認識できなくなってしまうからです。

 この1秒4文字は、マレーネ・デートリッヒ、ゲーリー・クーパー主演の『モロッコ』(1930年、米国)以来守られている伝統です。

 『モロッコ』は当時、アメリカでは女性同士のキスで物議を醸したといわれますが、日本では、活弁文化に終えんを告げた作品でした。

 フランス外人部隊のプレーボーイと、男に飽きたキャバレー歌手。本気の恋はないはずの二人の純愛物語。ラストで、移動する部隊を追って、デートリッヒがハイヒールを脱ぎ捨てる場面は、あまりに有名ですね(もっとも、砂漠で裸足は危険ですが...)。

 監督はジョセフ・フォン・スタンバーグ。デートリッヒを使ってドイツ最初のトーキー『嘆きの天使』を撮った人です。

 『雨に唄えば』で描かれたように、そのころまで、映画に声の演技はありませんでした。名匠ヒッチコックの最初のトーキー『恐喝(ゆすり)』の主演女優は東欧出身で、英語がうまくしゃべれず、別の女優の英語に合わせて演技をしたというくらいです。

 アニメの場合、人形や漫画は元の声を持っていないわけですから、それぞれの国での声を持つことになります。ディズニー作品は、子どもは字が読めないという立場から、以前は吹き替えのみでした。大人を観客とするアニメが増え、アニメの字幕版も登場します。子どもが見るものでも、ロビン・ウィリアムスのジーニーやクララ・ルミャーノワのチェブラーシカなら、英語やロシア語は分からなくても楽しめますからね。

 洋画の吹き替え版が増えたことは、昨年、洋画と邦画の興行収入が逆転したことを考え合わせると、大人でも字が読めない人、読みたくない人が増えたということなのかも知れません。

 この辺で話題のミリオネア風に「ファイナル・アンサー」。まず、字幕で見て、面白かったら、吹き替えでもう1回。複雑な話なら、その逆で。

(2009年5月9日号掲載)
 
キネマなFAQ