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04 「舞姫」(1989年) 〜見てから原作や小説読む?

 Q 本屋さんには映画の原作本や小説化本が並んでいます。読んでから見るのと、見てから読むのではどちらがいいのでしょうか?

 A まず間違いなく言えるのは、原作でなく、映画の小説化本の場合、映画を先に見るべきです。そうしないと、探偵小説の謎解き部分から読むようなもので、映画の楽しみは半減するでしょう。

 問題となるのは、たいていの映画に原作があって、それを読んでいない場合です。例えば、1989年の東宝作品『舞姫』(監督・篠田正浩、脚本・田村孟)を考えてみましょう。

 原作は、近代日本文学の古典中の古典。世代によっては、国語の教科書に載っていたかもしれません。映画は、大人の日本人なら知っているという前提で作られてはいますが、同時に、日本文学を全く知らない外国人や日本の若い世代が見ても楽しめるように出来上がっていますので、後から原作を読んで楽しむことも十分に可能です。

 しかし、原作誕生100周年に製作されたこの日独合作映画は、『舞姫』の忠実な映画化とはいえません。主人公・豊太郎と原作者・森鴎外を重ね合わせて脚色されています。

 つまり、舞姫の物語を透かして鴎外の姿が見えるような仕掛けがあるわけです。それを十分に楽しむためには、作品だけではなく、鴎外とその時代について一定の知識が必要になります。この場合、原作とその解説程度は先に読んでおいた方が、より楽しめる可能性が高いと言えます。

 もう一つの例として、2003年にアカデミー賞作品賞を獲った『めぐりあう時間たち』(監督・スティーヴン・ダルドリー)を挙げましょう。この映画の原作を読む必要はありません。

 しかし、ニコール・キッドマンが演じたバージニア・ウルフという英国女性作家と、彼女の作品『ダロウェイ夫人』について全く知らないと、映画を正しく理解することは、まず不可能と言ってよいでしょう。

 『舞姫』の豊太郎を演じた郷ひろみは演技者として並々ならぬ才能を発揮していますが、ファンには、彼が格好良く映っていればそれだけで満足かもしれませんね。そんな映画の見方も「あり」です。また、原作が古典あるいは、将来の古典とは限りませんし、『風と共に去りぬ』のようにある俳優を念頭に置きながら書かれた小説さえあります。

 というわけで、答えは、読んでおくべきなのに、まだ読めていないと思うものが原作なら、読んでから。そうでなければ、映画を見てからお読みください。
 
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