記事カテゴリ:

11 「道」(1954年) 〜アカデミー賞作は面白い?

 Q アカデミー賞受賞作品を見ましたが、あまり面白くありませんでした。アカデミー賞は映画選びに役に立たないのでしょうか?

 A 今年のアカデミー賞発表も目前ですね。アカデミー賞には現在、20以上の部門がありますから、そのうちのどれを参考にされたのかによって答えは違います。演技賞は個人の演技への評価ですから、映画全体の出来とは別ものです。映画の完成度の判断には不向きかもしれません。

 実は、作品賞の場合も、米国の映画業界人たちだけが選ぶ賞ですから、一般の観客が感じる映画の面白さと必ず一致するわけではないのです。

 そこで、私がお勧めするのは、脚本賞と外国語映画賞です。何といっても、脚本は映画の命ですから、過去の脚本賞を取った映画は粒ぞろいです。また、外国語映画賞の場合、アカデミー賞以外にも映画祭などで賞を獲得していて、異なる文化的背景においてもその価値が認められていることが多いのです。昨年の日本映画『おくりびと』もその一つですね。

 現在の形での外国語映画賞受賞第1作もそうでした。

 1954年のイタリア映画、フェデリコ・フェリーニ監督の『道』です。ベネチア映画祭で銀獅子賞を得た後、アメリカで公開され、56年にアカデミー賞外国語映画賞を獲得しました。日本でも公開年度に、キネマ旬報の外国映画ベストテン第1位になっています。

 映画を知らなくても、ニーノ・ロータによるテーマ曲を耳にしたことのない人はまれでしょう。アンソニー・クイン演じる獣のような大道芸人ザンパノと、彼に買い取られて酷使される無知で無垢な女ジェルソミーナの物語。フェリーニが故郷で見聞きしたことに着想を得た作品とも言われます。主人公ジェルソミーナを演じたのは監督の妻、ジュリエッタ・マシーナ。リアリズムの感覚と抒情性が見事に融合した古典的名画です。

 「この世の中にあるものは、みんな何かの役に立っている。例えば、この石ころだって」

 「生きている意味が分からない」というジェルソミーナに、リチャード・ベイスハート演じるサーカス芸人が語るこの有名なせりふは、映画を見た多くの人々を励まし、勇気づけてきたに違いありません。フェリーニ監督は実に4度にわたりアカデミー外国語映画賞を受賞しましたが、分かりやすく、より広範な層の人々から支持される作品といえば、やはり『道』でしょう。

 数あるアカデミー賞受賞作の中から、あなた自身の選ぶ最優秀作品を選んでみてください。
(2010年3月6日号掲載)
 
キネマなFAQ