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21 「タンポポ」(1985年)映画館でパンフ買うには

 Q 映画館でパンフレットを買おうか迷います。どうやって決めたらよいでしょう?

 A 最近では結構高価な買い物ですから、迷うのも当然です。海外の映画館で買おうとしたら、売っていなかったという経験がおありかもしれませんが、英語ではprogramかbrochureの前にsouvenirを付けています。

 観劇やスポーツのお土産の冊子。ですから、特別な映画には豪華なものが作られますが、映画館でどの映画でも買うという習慣は外国にはないようです。

 日本で映画のパンフレットが簡単な上映案内=プログラムから独立した文化となったのは、戦後の映画全盛期に洋画ロードショーがおしゃれな余暇の過ごし方となったころからだと思います。WEB(ウェブ)時代の今日、映画についての情報を得るだけなら、パンフレットは不要かもしれませんが、「あの時、あの人と、あの劇場で見たあの映画」という思い出の縁(よすが)となれば話は別です。

 映画を見終えて、今日の感動を覚えておきたいと思われたら、迷わず売店に直行してください。つい買いそびれて、後で後悔することがないように。

21-kinema-0115p.jpg 私の知人は、伊丹十三監督の『タンポポ』(1985年)をいち早く試写で見たそうです。

 主人公は山崎努演じる大型車の運転手。宮本信子演じる、夫に先立たれたラーメン店の女店主を助けて、さびれた店を大繁盛店にするという物語。流れ者が美しい寡婦と少年を助ける物語の枠組みは、ウエスタンに擬(なぞら)えられましたが、本筋の間に挿入される役所広司や井川比佐志、三田和代ら個性派が演じるサイドストーリーこそ、鬼才が見せたかったものでしょう。挿話のそれぞれの場面が鮮烈な印象を残し、海外でも高い評価を得ています。

 ラーメンやオムライスといった所謂(いわゆる)B級グルメがいかにもおいしそうに登場しますが、ラーメンの作法を伝授する老人役を演じたのは大友柳太朗。戦中、新国劇から映画に転じ、1950年代の東映健全娯楽時代劇全盛期に、『御存じ快傑黒頭巾(かいけつくろずきん)』の二丁拳銃快活ヒーローから『仇討(あだうち)祟禅寺(そうぜんじ)馬場』の陰鬱(いんうつ)な生田伝八郎まで、さまざまな役を演じた時代劇スターです。

 晩年はテレビで自身の人柄そのもののようなおじいちゃんを多く演じました。『タンポポ』が最後の作品となりましたから、大の大友柳太朗ファンであった彼は、「試写ではなく、映画館で映画を見終えて、いそいそとパンフレットを買ってみたかった」と今でも思うことがあるそうです。

 2011年も皆さまのご質問をお待ちしています。
(2011年1月15日号掲載)

=写真=『タンポポ』発売・販売元ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント 4935円
 
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