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24 オランダ アムステルダム 〜低地にある"自由過ぎる国"〜

24-kaigai-0115m.jpg よく使われるジョークに「食べていたキャンディーをある国で捨てようとしたら、その町の人に注意された。どこでしょう?」というのがある。
 答えはオランダ。「アメ捨てる駄目(アムステルダム)」。

 鎖国時代の出島での貿易相手や『蘭学(らんがく)事始』などで日本にはなじみの深い国・オランダ。それなのに訪れる日本人は多くはない。でも、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」や、レンブラントの「夜警」など日本でも人気のある絵画は多い。

 何といってもゴッホ美術館がある。『アンネの日記』の舞台の屋根裏部屋も見学できる。スピード・スケート王国だし、チューリップと風車もある。煉瓦(れんが)造りの中央駅は日本が模して建てた東京駅そのままだ。そして"自由過ぎる国"の風習"飾り窓"もまだ残る。

24-kaigai-0115p.jpg 好奇心の強い私たち夫婦は、朝早く起きて泊まったホテルの周辺を散歩する。地元の人々の生活や通勤の様子など日常性がうかがえるからだ。駅近くの安宿に泊まった私たちは、駅を背にして小路を縫うように歩いた。新聞スタンドや開店前の準備を始める店主、立ち話をする老人たち、そそくさと勤め先に急ぐサラリーマン。日本とさして違いはない。

 ただ、歩くたびに出くわす水路、運河。そう、国名のオランダHollandは愛称で、ネーデルランドNetherlandすなわち「低い土地」の意味を持つ。東京に"ゼロメートル地帯"と呼ばれる下町があるように、海面とほぼ同じ高さの低地を干拓したり、ポルダーとして知られる堤防やダムを造って建設された町が多く、アムステルダム、ロッテルダムのように名前にダムが付いている。国内に森林はなく最高地点でも321メートル、3割が海面より低い。運河に沿って建てられた商館は"妻破風"という造りの最上階に荷の上げ降ろし用のフックが常備されている。

 そんな光景を楽しみながら歩いていると、朝のコーヒーが欲しくなった。同じように散歩している男性に声を掛けてみた。オランダでは英語が公用語のようなものだ。

 「すみません、この近くにカフェありませんか」。真面目そうな男性が、突然怪訝(けげん)な顔つきに変わった。もう一度聞いてみる。話は通じているらしい。ここには喫茶店がないのかな、と訝(いぶか)しく思っていると、突然「あなたはマリファナが吸いたいのか」と言い出した。キョトンとした私は「いえ、ただコーヒーが飲みたいんです」。すると男性はホッとしたように、行きつけのコーヒーショップに連れて行ってくれた。そこで私は早朝のうまいコーヒーを一人すすりながら複雑な思いに駆られた。

 「ここでは、カフェとはマリファナなど麻薬を吸う場所で、コーヒーはコーヒーショップで出すのです」。別れ際に発した男性の言葉が頭に残る。こんな自由過ぎる所に来た日本の若者が、すっかり染まって帰国したら...。つい余計なことを考えてしまった。
(2011年1月15日号掲載)

=写真=跳ね橋を案内してくれた若い女性


 
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