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13 女優さん 〜変身ぶりにびっくり キスシーンで泣かれ〜

13-kuraishi-0129.jpg 前回まではとてもまねのできない大先輩スターの裏話を披露しましたが、銀幕の女優さんにもいろんなタイプの方がいました。

 入社したてのころ、「女優さんはすごいなぁ」と思ったのが、あまりの変身ぶり。すっぴんだと誰だかわからない人が、いざ撮影となると見違えるような美女に! でも、大先輩の女優さんたちは魅力的でした(共演の機会はなかなかなく、残念でしたが)。

 今は俳優同士のロマンスが宣伝に使われることが、ままありますが、あのころはご法度。年齢や普段の生活はベールに包まれ、神秘的であることがスターの証しでした。

  姿美千子さんとコンビ
 若手で何本も共演したのが姿美千子さん。主演クラスの女優さんとは思えないほど、庶民的で話しやすかったですね。ブランド物も持たず、一時は大映の寮住まいをしていたほど生活も質素でした。彼女は橋幸夫さんの相手役としてデビューしましたが、日活の浜田光夫さん・吉永小百合さんの人気コンビの向こうを張って、僕と青春コンビを組むことになりました。

 当時、集団就職で上京した若者たちで組織された「若い根っこの会」があり、その青春を描いたのが『若い樹々(きぎ)』で、初共演作です。この映画がきっかけで会の若者と交流が始まり「お互いに頑張りましょう」と励まし合いました。初めは映画の宣伝でしたが、僕は長野県出身、彼女も北海道出身と同じような立場でしたので、彼らの気持ちに共感したものでした。

 共演2作目の『高校三年生』で、2人のキスシーンがありました。唇と唇が軽く触れただけでしたが、彼女にとってはこれが人生で初めてのキスだったそうです。ファーストキスが仕事でだったのは悔しいと泣かれてしまい、どうしてよいかわからず困りました。

 のちに浜口庫之助夫人となった渚まゆみさん、東京子さん、高野通子さんらとの共演で「真白き富士の嶺」という作品が撮られる予定でしたが、青春物に重きを置いていなかった永田雅一社長の鶴の一声で、中止になってしまいました。スチール撮影の時、姉御肌(あねごはだ)で粋な役が多かった江波杏子さんの三つ編みしたかわいいおさげ髪とセーラー服姿を見た衝撃は、今でも忘れられません(笑)。

  根性の高田美和さん
 大映の清純派スターとして、姿美千子さんと人気を二分していたのが高田美和さんです。彼女の父親は時代劇スターの大御所、高田浩吉さん。高級品を身に着け、運転手、付き人、マネジャーと共に撮影現場に現れ、社員食堂での食事はなしと、まさに絵に描いたようなお嬢さま。でも本人は至って無邪気で普通の女性でした。

 共演した『青いくちづけ』で、僕が彼女の頬をたたくシーンを撮影した時のことです。遠慮した僕が恐る恐るで力を入れなかったためNGが続き、彼女の頬が赤く腫れてしまいました。「いいから思い切りたたいて!」と彼女から言ってくれ、5回目でOKとなりました。根性のあるプロの女優さんでしたね。

 東京撮影所がストのため京都で撮影したんですが、自宅に招待してくれたんですよ。高田浩吉さんにお目にかかりましたが、さすが大スターで後光が差すようなオーラがありました。好意を持ってくださったのか、機嫌良く超高級ウイスキーの封を切って歓迎してくれました。3週間の京都での撮影中はつまらないところで見えを張ってしまい、ギャラが15万円しかないのに支払ったホテル代は20万円。自分も勝さんになっちゃったかなと反省しました(笑)。
(聞き書き・西沢よしえ)
(2011年1月29日号掲載)

=写真=日活の向こうを張ってコンビを組んだ姿美千子さん

 
倉石功さん