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25 アメリカ セントルイス 〜S・ミュージアルに憧れて〜

 2009年のアメリカ・メジャーリーグのオールスターゲームは、中西部のセントルイス(ミズーリ州)で行われた。この年の見どころは始球式に登場したオバマ大統領だった。

25-kaigai-0129p1.jpg その始球式に使うボールを大歓声の中、オープンカーに乗って運んだ88歳の老人こそ、かつて"スタン・ザ・マン"(男の中の男)と呼ばれたスタン・ミュージアル。リーグを分けて、脅威の4割打者テッド・ウイリアムズと並び、メジャーリーグの中軸になったセントルイス・カージナルスの名選手だった。

 私はセントルイスを2度訪れた。1度目のこと。シカゴからアムトラック(アメリカ鉄道)に乗って5時間ほど。長いイリノイ州の穀倉地帯を抜けた所に、この南部の町はある。日本と違い、地方の鉄道の駅はひっそりとしている。駅前にはタクシーもない。スーツケースを引き引き、町の方に向かう。

 少し早いが、昼食を取ろうと思って軽食堂に入った。おいしいソーセージとサンドイッチなどを平らげ、アラフォー(40歳ぐらい)のご主人と少し会話。
 「どこから来たんだ」
 「日本から」
 「なんでまたセントルイスに」
 「若いころ野球をやっていて、昔からスタン・ミュージアルの大ファンでした。その町を見たかったんです」
 「お前、ミュージアルが好きだったのか」

25-kaigai-0129m.jpg ここから話は盛り上がっていく。ミュージアルはカージナルス一筋。生涯打率3割3分1厘を残して1963年に引退した。その23年間に、首位打者7回、打点王2回、生涯安打数3630本、本塁打475本だった。オールスターゲームも出場11回。ポーランド移民の子として、不自由な野球道具で育った。定評あるマナーの良さ。彼もミュージアルの大ファンだった。

 英語の前置詞onには特別な使い方がある。「This  is on me.」と言うと、「これは私のおごりです」。会計を済ませようとすると、ご主人が「This  is on the  house.」(これは店のおごりだ)と言った。

 感謝感激! 遠い町を訪ねての感動を早々経験できた。4年後に再訪した時もここに立ち寄り、日本からの土産をご主人に手渡した。私を覚えていた。

 ミュージアルが活躍したブッシュ球場の前には、彼の銅像がある。その日は試合はなかったが売店が開いていて、木製バットをデザインしたカージナルスのネクタイを買った。今でも時々締めている。

25-kaigai-0129p2.jpg 一昨年のオールスターゲームの画面背後に、頻繁に映っていた巨大な金属製のアーチを覚えているだろうか。高さ192メートルもあるこの町の"ゲートウエイ・アーチ"だ。カプセル状の乗り物で内側から展望台に行くのだが、風が吹くと揺れるのが少し怖い。西部の草原が見える頂上は展望抜群なのだが、当然のことながら足元には何もない。2回の訪問で2回とも上ってみたが、やはり足がすくんだ。
(2011年1月29日号掲載)

 ◇訂正 1月15日号の(24)「アムステルダム」で「カフェは麻薬を吸う場所で、コーヒーはコーヒーショップで」は、カフェとコーヒーショップが逆でした。

=写真=スタン・ミュージアル
=写真=ゲートウエイ・アーチ(手前は裁判所)
 
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