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23 「決断の3時10分」(1957年) 〜面白い西部劇を見たい!

23-kinema-0305p.jpg=写真=『決断の3時10分』発売・販売元/(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 1480円

 Q 最近、劇場で西部劇があまり上映されません。面白い西部劇を見たいのですが...。

 A 確かに昔ほど頻繁には西部劇が公開されませんね。最近、日本で公開されるのは、名作のリメークが多くなっています。

 今月公開予定の『トゥルー・グリット』も、ジョン・ウェインがアカデミー賞を受賞した『勇気ある追跡』を鬼才コーエン兄弟がリメークしたもの。ウェインの演じた伝説の保安官ルースター・コグバーンに、ジェフ・ブリッジスがキャスティングされています。

 米国ではいっときほどではないものの、西部劇は製作され続けており、テレビのミニ・シリーズなどで佳作も結構作られているのですが、世界市場でヒットするものは確かに少なくなりました。

 その理由には、価値観の多様化やコストと収益などさまざま考えられるでしょうが、西部劇で描かれる生活世界の皮膚感覚のようなものが、アメリカにおいてさえ失われていることが挙げられるかもしれません。例えば、『3:10 TO YUMA』という映画のリメーク版とオリジナル版を比べてみましょう。

 長野でも公開された『3時10分、決断のとき』(2007年、監督ジェームズ・マンゴールド)のオリジナル版は1957年のもので、邦題は『決断の3時10分』。

 干ばつに苦しむ牧場主ダンは水を確保する金を得るため、悪名高い盗賊団の首領ウェイドを護送する手伝いに志願します。最寄りの鉄道駅まで連れていき、3時10分発のユマ行きに乗せるだけのはずだったのですが...。

 リメーク版では今をときめくラッセル・クロウが強盗を、バットマンでおなじみのクリスチャン・ベイルが牧場主を演じています。旬のスターの競演でアクションも満載。しかし率直に言って、モノクロでグレン・フォード、ヴァン・ヘフリンという地味な役者の組み合わせのオリジナルの方が断然面白いと思うのです。

 その証拠は、西部劇の古典『シェーン』での父親役で知られるヴァン・ヘフリンが演じるダン。非「イケメン」、普通のおじさんが、だんだんと格好よく見えてくるのです。ならず者が抱く家族への憧憬、そしてラストの雨。西部の生活感がリアリティーを与えます。

 1950年代には異色作といわれた作品ですが、いま見ると王道。監督のデルマー・デイヴィスは、名作『めぐり逢い』の脚本、『避暑地の出来事』の脚本・監督を務めた職人です。彼の西部劇にはゲイリー・クーパーの『縛り首の木』やジェームズ・スチュワートの『折れた矢』もあります。こちらもどうぞ。
(2011年3月5日号掲載)

 
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