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27 アメリカ ニューヨーク 〜ピカソとの対面に感動〜

27-kaigai-0305p.jpg 一枚の絵が若者たちを刺激した。ピカソの若いころの作品「ガートルード・シュタインの肖像」=写真=だ。私が上田染谷丘高校に勤務していた時、教科書にこんな内容の話が出ていた。

 若き日のピカソは1905年、後援者のガートルード・シュタイン女史を自宅アトリエに招き、肖像画を描き始めた。気に入るまで90回近くモデルを務めさせた。しかし、ある日突然、顔の部分を拭い取ってしまった。「いくら見つめてもあなたが見えてこない」と言って家を出て行ってしまう。

 翌年秋、スペインから戻った彼は顔を完成させた。彼女の顔は40代のそれになっていた。仲間が「全然似ていないぞ」と酷評すると、ピカソは「そのうち彼女が絵に似てくるさ」と答えたと、後日シュタイン女史が語っている。女史は医学を修めた女流作家の卵で、後に著名な批評家になるのだが、若かった彼女の聡明さが表現しにくかったようだ。後に彼女は「私の内面を的確に描いたのはピカソだけ」と語っている。

 このことを教科書で知ったクラスの生徒たちから「本物を見てみたい」との要望が続出した。たまたま正月のツアーの売り込みに来ていた旅行業者の耳に入り、「三が日明けの4日からなら激安ツアーがある」と言う。機中泊を含めて3泊4日で、ホテル、送迎バス、3時間市内ツアーを含めて9万8千円。目的地はニューヨーク。親も含め30人ほどの団体旅行になってしまった。

 ニューヨークが「ビッグ・アップル」と呼ばれるのは「一度食べたらやめられない禁断のリンゴ」から来ている。エデンの園に出てくる禁断の木の実だ。市内バスツアーで国連本部などを見学した翌日、セントラル・パークの一角にある世界3大美術館のメトロポリタン美術館を訪れた。

 1階中央の正面に、その肖像画はあった。100×81センチの大きさ。「あっ、ほんとに顔の周りに拭った跡がある!」。皆まじまじと見ている。隣のアメリカ人旅行者にガイドが英語で、私たちが教科書で知った通りのことを説明している。2時間半後、もう一度ピカソの名作と対面して美術館を出た。

27-kaigai-0305m.jpg 夕方、予約していたわくわく体験に向かう。ヘリコプターによるマンハッタン島一周だ。何台にも分乗してヘリに乗り込む。事前に調べてあった機内の左側座席を目指す。マンハッタンの上空では、左周りが鉄則。右座席だと海ばかり見る羽目になる。自由の女神の上空では旋回、ホバーリングなどのサービスで感動は絶頂になった。

 翌日、映画『ナイトミュージアム』の撮影舞台の自然史博物館やリチャード・ギアの『オータム・イン・ニューヨーク』のロケ地、セントラル・パークを歩く。参加した上間(旧姓・木村)春江さん=県総合教育センター心理相談員=は「ガートルード・シュタインの肖像の話と、その絵にをじかに見た感動は生涯忘れることはない」と当時を振り返った。
(2011年3月5日号掲載)


 
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