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06 「ひらめき」は「おいしい!」

 質問への答えを求めて続くイライラ、モヤモヤは、ある時突然に霧が晴れるように消え去ります。「分かった!」という「ひらめき」が起こる瞬間です。

 「ひらめき」の体験は、それまでのイライラから知性と感情を解放するだけでなく、大きな喜びをもたらします。その喜びを表わすエピソードとして有名なのが、アルキメデスの話です。

 古代ギリシャのシュラクサイという都市国家の王様が、純金の王冠を作るように命じました。一人の金細工師に金塊が渡され、王冠は出来上がってきたのですが、王様の頭に一つの質問が浮かびます。それは、「この王冠は、果たして、余が与えた金塊をすべて使って作られているだろうか。王冠の重さは、与えた金塊の重さと同じだが...。この職人は、材料の一部をくすねて、代わりに、別の金属を混ぜたのではないだろうか?」。それで、その問いを当代随一の数学者、アルキメデスに託したのです。

 彼は、日夜この質問に取り組みますが、なかなか答えにたどり着くことができません。そんなある日、いつものように公衆浴場に行きます。湯船に体を沈めると体が軽くなり、湯船のへりからザバザバッとお湯がこぼれました。それを見た瞬間に、アルキメデスの頭に閃光が走ります。「分かった!」

 このひらめきは、長期間にわたってアルキメデスの頭を覆っていたモヤモヤの雲を一瞬にして吹き飛ばし、彼の心は大きな喜びに満たされます。彼は喜びのあまり、服を着るのも忘れて裸のまま、「分かったぞ!」と叫びながら、通りを駆け抜けて家に戻ったと伝えられています。

 このひらめきを元に、彼は、"アルキメデスの原理〔注〕"を明らかにします。そして、この話のポイントは、「(答えが)ひらめく」こと、つまり、「分かった!」という経験は、知性にとって大変「おいしい」経験であるということです。

 我々は日ごろ、多くの食材の中から食べる物を選びますが、選ぶときに重要な基準の一つが、その食べ物を食べると「おいしい」と感じられるか否かということです。おいしい食物や料理を口にすると、「食べること」に喜びを感じ、食が進むからです。

 それと同じように、知性にとっても、「ひらめき」は「おいしい」経験であるために、「ひらめき」の経験が増えれば増えるほど、知性を働かせることに喜びを覚えるようになり、知性の働きが順調に進むようになるのです。

 〔注〕浮力の原理(物体を液体に沈めた時、その物体は押しのけた液体の重さと等しい浮力を持つ)。アルキメデスは満水の容器に王冠と、同重量の金塊をそれぞれ沈めて、あふれた水の量(体積)を量った。王冠と金塊では、あふれた水の量が異なり、よって、この王冠には金以外の金属が混ざっていたことが分かった。
 
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