
子どもに「神さんって、どんな人?」なんて聞かれると、立ち往生してしまう。仏さんなら、家の仏壇を開ければ、印刷された阿弥陀仏が現れる。菩提寺に行けば、お釈迦様や観音様に会える。
ところが、神様は具体的な姿がない。広辞苑には「人間を超越した威力を持つ、かくれた存在。人知を以てはかることのできない能力を持ち、人類に禍福を降すと考えられる威霊」とある。
「神様とは...」の質問に、もっと易しい説明ができないのか-と思っていたところ、絶好の説明を得ることができた。
長野高校で開かれている『古典を読む公開講座』で、6月(2009年)は「仏教と神祇信仰」だった。講師は立命館大学副総長の本郷真紹さん。古代史と宗教学の俊英だ。京都大学出身でヨーロッパに数年留学、その間に各国を旅行した。その結果、得たという考察が面白い。
「日本の神さんにそっくりなものを発見しました。それは、精霊信仰です。ギリシャをはじめ、特に北欧諸国では、妖精が日本の神に当たります。アニミズム(原始信仰の超自然観)の典型です」

自然界のすべてにニンフが棲んでいる。風のニンフ、雨のニンフ、草花にもニンフが棲む。日本では風神、雷神、水神、滝も神様だ。富士山をはじめ、名だたる高峰もみんな神様だ。
「これがイチョウの神さんだよ」
「どうして、こんなに大きくなったの?」
「パワーがあるからさ」
樹高約32メートル、目通り周囲8・6メートル。この木の前に立つと、神様を実感できること請け合いだ。幹に手を当てると盛んな生命力をいただける気分になる。
1935(昭和10)年に県の天然記念物に指定され、今は市の指定文化財。保存会や市教委の説明板は「樹齢900年から1200年」と記す。飯山市瑞穂神戸(みずほごうど)の大イチョウ(2本の融合木)も有名だが、1本の木としてはそれより一回りも二回りも大きい。民家2軒分ぐらいの神域に立ち、善光寺平の有為転変を見下ろしてきた"長老"といえよう。
(2009年7月4日号掲載)