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073 御所天満宮 〜絵馬並び合格祈願に列も

073-rekishi.jpg JR長野駅の東口一帯が様変わりした。積年の区画整理事業が姿を現している。この付近にある鳥居が傾いた神社が御所天満宮。通称「中御所の天神さん」だ。受験シーズンには合格祈願の親子が行列をつくる。

 正式には『亀戸天満宮分社』と呼ぶ。東京の亀戸天神は「東の大宰府」ともいわれ、天神さんこと菅原道真を祀り霊験があるとされる。九州の大宰府天満宮を本家とすれば、御所天満宮は孫社になる。

 一帯はもともと鎌倉時代には地元の豪族・漆田氏の領地で、同神社も農業神であったらしい。第2次大戦後、亀戸天満宮と分社の縁を結んだ。1992年に再建した小さな社には合格祈願の絵馬が並ぶ。

 菅原道真は学問の神様だが、最近、奈良女子大名誉教授・佐藤宗諄さんの講義を聞き、道真の人間像を知ることができた。

 近年、道真は優れた政治家であったという観点で再評価が進み、「道真に関する本は二百数十冊にのぼる」という。曽祖父、祖父、父ともに優れた儒学者の一家に生まれた。父は文章博士(もんじょうはかせ)。彼も33歳で博士になる。帝に文学と歴史を教える役職だ。

073-rekishimap.jpg 道真は「政治家は優れた詩文が詠める文人であるべきだ」という中国の理想を経国の大業とし、右大臣に上り詰める。しかし、ライバルの左大臣・藤原時平の讒言(ざんげん)で失脚、大宰府で亡くなった。

 その怨念から火雷神となって、藤原一族に襲いかかる-忠臣蔵とともに、日本人にアピールするドラマだ。火雷神のパワーを頂けば、受験戦争など怖くない。全国に天神社は1万数千にも上る。

 天神信仰の要は「優れた政治家は、高い理想=詩文を詠める」ことなのだ。道真は白楽天の詩文を座右にして、和歌の文化を日本に定着させようと試みた。天神信仰がある限り、日本という国はそれほど悪くはならない、という気がするのだが...。

(2009年7月18日号掲載)

写真=なぜか鳥居が傾いている「中御所の天神さん」

 
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