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08 「本当か?」という質問

 「ひらめく」力はどうやったら育つのか、については、後ほどゆっくり取り扱うことにして、今回は、知性の仕組みの理解をもう一歩先に進めましょう。

 ひらめきが起こることによって、我々は開放感と喜びを経験するのですが、実は、ひらめきが起こった時点で知性の働きが終了するわけではありません。ひらめいた喜びもつかの間、次の動きが起こります。

 それは、そのひらめきの内容が、「本当か?」「正しいかどうか?」という質問の発生です。

 かばんの中に携帯電話を入れたつもりで外出し、使おうと思ってかばんの中を探したところ見つからない、といった経験がありませんか? 想定外の状況に対して、知性は直ちに質問を発します。「携帯、どこにあるんだろう?」そして、携帯の在り場所を求めて、考えるプロセスが始まります。そして、そのうちに、「あっ、わかった。ダイニングテーブルの上だ! 今朝、出掛ける前に、朝食を取りながら携帯を使った。そのまま、テーブルに置いて、出掛けてきたんじゃないだろうか」とひらめいたとします。

 しかし、そのひらめきが起こるやいなや、あなたの知性は次の質問を発することに気付くはずです。「でも、本当にそうだろうか?」という質問です。いったんその質問が出ると、最初の質問のときと同様に、答えを求めて考え始め、不安、イライラが起こります。

 そして、その不安を振り払おうとして、自分のひらめきが「正しかったかどうか」を「確かめ」ようとします。この例で言えば、自宅に電話をして、家にいた家族に、「ダイニングテーブルの上に、私の携帯電話置いてない?」と確かめてもらったりします。そして、「ああ、置いてあるよ」と言われて、「ああ、やっぱり、このひらめきは正しかったのだ」と納得し、もう一度開放感と喜びと安心を得るのです。

 もし、「いいや、見えないよ」という返事であれば、あなたは、もう一度、元へ戻って、「じゃあ、どこだろう」という質問を考え直さなければなりません。

 小学生の算数の時間を思い出してください。先生や親が口を酸っぱくして繰り返した注意の一つが、テストが「『できた!』と思っても、必ず、検算(確かめ算)をしなさい!」ではなかったでしょうか。なぜ、検算が必要なのでしょう。

 それは、「ひらめき」には、偽物が混じるからです。知性は、ひらめきに混じる偽物の答えをふるい落とすために、ひらめきに引き続いて、最初に起こした質問(わからない「内容」を問う、つまり、疑問詞"何?なぜ?誰?どっち?どうやって?いつ?"で始まる質問)とは別の種類の質問(獲得した答えが「正しいかどうか?」)を起こすのです。

(2008年10月25日号掲載)
 
たてなおしの教育