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10 質問はリレーされる

 質問には、さまざまな種類とレベルがあります。したがって、質問によっては、一人の人間の頭だけでは解決できずに、同じ質問が次から次へと多くの人にリレーされて、何年、何十年、何百年かかかって、ひらめきに到達したり、確かめられたりすることがあります。

 紀元前4世紀に生きたアリストテレスの著作は大変に優れた理解の体系であったため、彼は「学問の父」と呼ばれ、近代に至るまで西欧文化の教科書的存在でした。そのため、体系(主に、自然現象の仕組みの理解に関して)の正しさが確かめられていないものがいくつもありました。

 例えば、アリストテレスは、「物が落下するとき、重いものの方が、軽いものより速く落ちる」と考えました。これを聞いたとき、皆さんの頭に「ふーん...。しかし、あれっ、待てよ?」というような反応が起こらないでしょうか?

 古代から中世ヨーロッパの人々も、日常生活の経験を通じて、この部分の確かさについて「?」を起こしたはずです。しかし、当時はこの考えの正誤を確かめる方法がありませんでした。それだけでなく、アリストテレスは大変な権威として受け止められていましたから、「これって、本当?」という質問が生じても、大先生の言うことに間違いがあろうはずがないと、その質問を大っぴらに問うことはできませんでした。

 しかし、その質問は、人から人へとひそかにリレーされ、近代になって、一人の人物によってようやく確かめられることになります。ガリレオ・ガリレイです。

 ガリレオは、重さの異なった物体を斜面で転がす実験などを通じて、このアリストテレスの理解が間違っていることを確かめます。そして、次々と、さまざまな実験を通じて、アリストテレスをはじめ、それまで正しいと信じられてきた理解の間違いを発見し、新しい理解で置き換えをし、近代自然科学の礎を築くことになります。

 イタリア、ピサの斜塔は、ガリレオがこの落体の性質の実験をしたとして(実際には、そこでは行わなかったようです)有名になった場所ですが、一つの重要な質問が、約1800年という長い年月をリレーされて結論に到達した記念碑でもあるのです。

(2009年1月1日号掲載)
 
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