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11 知性の働きは2種類ある

 「知識はリレーされる」ということは、複雑な知識の獲得は「分担して」行われる、ということでもあります。
 2002年に小柴昌俊氏が、そして昨年、3人の日本人(1人は米国籍)がノーベル物理学賞を受賞しました。受賞の対象となった彼らの研究の種類を「知性の仕組み」に基づいて分類すると、彼らの分担部分が異なっていることが分かります。

11-0207.gif知性の働きは2種類ある
 知性の働きが(1)「疑問詞」が付いた質問と(2)「本当か」どうかを問う質問の、2種類の質問とひらめきによって成り立っていることを見てきましたが、南部陽一郎氏、小林誠氏、益川敏英氏の研究は、素粒子の世界における「なぜ」を問う部分--つまり、(1)の質問に答えようとするものです。

 南部氏は「『なぜ』物質は質量をもつのか?」という質問に、小林、益川氏は、「『なぜ』宇宙には、通常の粒子に比べて、『反粒子』がほとんど存在しないのか?」という質問に取り組み、彼らのひらめきが、それぞれの「理論」として表現されたわけです。

ひらめきは理論、理論は予想
 通常「理論」という言葉には、2つの意味があります。そのひとつは、「その正しさが『まだ確かめられていない』ひらめきの内容」を意味します(理論のもうひとつの意味は、また、後日説明します)。ですから、「理論」とは「たぶんそうじゃないか」という「予想」であり、その正誤が確かめられるのを待っている、知識の「前」段階ということができます。

 そして、南部氏らの理論(予想)が正しいかどうか((2)の質問)を確かめたのは、彼らの後に続いた「他の」研究者たちでした。(例えば、小林・益川理論については、2001年に、日本の高エネルギー加速器研究機構とアメリカのスタンフォード大学のチームによって、彼らの理論が正しいことが確かめられています)。
 これとは逆に、小柴昌俊氏の受賞対象となった主な点は、ある理論について(2)の質問に取り組み、その理論が「本当である」と確かめたという功績です。

 天文物理学では、素粒子の中に「ニュートリノ」という物質が存在することが確かめられていましたが、その「『ニュートリノ』が質量を持っており、それによってニュートリノ振動という現象が起きる」という理論が提唱されていました。その理論の正しさをスーパーカミオカンデの実験装置で確かめたのが、小柴さんたちのチームでした。

 このように、複雑な問題に関しては、長い時間をかけて多くの研究者たちが知性の仕組みの各部分を分担し合うことによって、さまざまな知識を獲得してきたことが分かります。
 でも、ここまで読んだお子さんが、「じゃあ、僕がやった算数の宿題の『確かめ算』はお母さんが分担してね」と言ったら?「それはなし!」ですよ。

(2009年2月7日号掲載)
 
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