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12 自前の知識と借りる知識

 これまで、知性の仕組みとその働きについて説明してきましたが、我々個々人が持っている知識のすべてが、このプロセスを経て獲得されているわけではありません。実は、その多くの部分を他の人々から借りているのです。

限られる自分で獲得できる答え
 小さな子どもたちが発する質問の量は、成長とともに膨れ上がっていきます。しかし、子どもたち自身が知性を働かせて、「自分自身で答えを獲得できる」質問の数と種類は、ごく限られたものです。

 自分で答えを見つけられる質問の例としては、「(ママがいない)どこ行っちゃったんだろう?」(家の中を探しながら考える)「あっ、きっと、トイレだ!」「本当かな?」(トイレまで行って声をかけてみる)
「ママ、トイレの中にいるの?」「いるわよ」という返事。「あっ、やっぱり、ここだった」などがあります。

 しかし、「ねえ、どうして、お月さまは形が変わるの?」という質問に対して、それらの物理現象の仕組みの答えを子どもが自分で発見することはできません。しかし、答えを得ることができないと、知性の欲求不満がたまっていきます。そこで、子どもたちは「ママ、教えて」などと尋ね、周りの大人たちから答えを与えられる(借りる)ことによって、その知りたい欲求は一応満足します。 

 なぜ、「一応」かと言えば、質問によっては、答え自体が複雑である場合(月の満ち欠けの仕組みを理解するには、太陽、地球、月、光の性質などの関係の理解が必要です)には、「お月さまはダイエットが下手なんだよ」などと、子ども自身が自分の知性の欲求が「いったん、満たされたと感じる」レベルでの答えを与えるほかないからです。

借りて増やす知識のストック
 しかし、このようにして、我々は、自分では獲得できない答えを、自分の身の周りの人々や古今東西の幾多の人間たちが、長い時間をかけて獲得し、伝えてくれた知識の倉庫から借りることによって、自分の知識のストックを増やすことができます。その倉庫は、本であり、テレビであり、おじいちゃんの話であり...と多岐にわたっています。

 さて、自分の知性を働かせて獲得する知識を「自前の知識」、他から借りてくる知識を「借りた知識」と名付けるとすると、我々個々人の知識の全体量の割合は、「借りた知識」が99・9%以上になります。自分の知性を使うわけですから、「自前の知識」は、我々にとって、欠くべからざる、最も大事な種類の知識であり、自分の知識庫の中心にあることは間違いないのですが、量的に見れば、「借りた知識」の方が、圧倒的に多いのです。では、「借りた知識」の特徴と、長所、短所はどのようなものでしょう?
(2009年2月28日号掲載)
 
たてなおしの教育