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14 借りる知識は知性発進の"呼び水"

 借りる知識は、井戸の手押しポンプの「呼び水」に例えることができます。呼び水がないと地下から水をくみ上げることができません。自前の知識も同じことです。

なぜ質問をしなくなるのか
 アニメ映画『となりのトトロ』の中で、新しい家へ引っ越したサツキとメイ姉妹が家の掃除をするために、手伝いに来たおばあさんに頼まれて、バケツを持って川に水をくみに行くシーンがあります。

 あのシーンを見たとき、私はてっきり、彼女たちがくんだ水でぞうきんを絞り、ふき掃除をするのだと思いました。ところが、サツキたちはくんできた水を手押しポンプの上から注ぎ込んだのです。そして、ポンプのハンドルを上下させると、水口から勢いよく水が吹き出しました。これが「呼び水」です。

 借りる知識は、この「呼び水」の役割に大変よく似ています。

 幼いころは、あふれるほどの質問をして親たちをてこずらせていた子どもが、年を経るにつれて(小学校中学年ころから)あまり質問をしなくなります。その理由の1つは、自分の置かれている生活環境に関して一定の理解が獲得されると、それらの環境の中で接する物事に関しては、新しい質問が出にくくなることです。

質問くみ出す新鮮なデータ
 このような知的マンネリ状態は、質問を発したいという欲求を持つ知性にとっては、車のアイドリング状態と同じです。知性は何とか質問を起こして車を発進させようとします。その状態が「つまんなーい...」「何か面白いことないかなあ...」などといったつぶやきとして表現されてきます。

 しかし、このとき、本などを通じて一定量の借りる知識を注ぎ込むと、日常生活を離れた世界のデータが呼び水となり、再び質問がわき出します。

 大学生の卒論を指導していると、時々「先生、卒論を書くために何について研究したらよいのでしょうか?」という質問にぶつかります。これは、読書などを通じて接するデータが少ないために井戸の水、つまり、自分が問いたい質問がくみ出せない状態になっていることを示しています。ですから、そのような学生に対しては「何でもいいから一冊本を読んできなさい」と指示を出します。一冊読み終えてみると、ポツリポツリ、あるいは次々と質問がわき出てきて、車が動き出すのです。

本は借りる知識の宝庫
 お子さんが、「つまんないなあ...」とつぶやくことがあったら、本屋に連れて行って「一冊、何でも選んでごらん」と、本という「借りる知識の宝庫」の鍵を渡してみてください。もちろん、図書館もOKです!

(2009年4月25日号掲載)
 
たてなおしの教育