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23 芝居の魅力 〜初日の気持ち忘れず 緊張感持って舞台に〜

23-kuraishi-0409.jpg 淡島千景さんと淡路恵子さんのお二人の芝居が素晴らしい『毒薬と老嬢』は、観客の皆さまの心に届く温かさを持ち、狂気とブラックユーモアの世界を伝え、笑いの止まらぬスリラーコメディーです。

 淡淡(あわあわ)コンビは姉妹、僕は自分がルーズベルト大統領と思い込んでいる狂った甥(おい)っ子の役。淡路さんは淡島さんから一字を頂いて芸名にしたほどの仲良しで、息のぴったり合った舞台が素晴らしかったですね。お二人とも映画の華やかな時代を経験されているだけに、舞台でもさすがに華がありました。

 やまない拍手に感激
 7年前のツアーで訪れた諏訪会場で、芸能界に入って初めてスタンディングオベーション(観客総立ちの拍手)を経験しました。しかも地元です。鳴りやまない拍手に、こんなに喜んでもらえるなんて俳優をやっていて良かったと、感激して泣きそうでした。

 映画『イヴの総て』を舞台化したブロードウエーミュージカルの名作、トニー賞の主要5部門を受賞した『アプローズ』には、3年にわたって3回出演しています。主演のマーゴ役は初演が越路吹雪さん、現在は前田美波里さんが演じています。

 僕が演ずるプロデューサーのハワード役は、金も力もあり思い通りに人を動かすボス的存在で、芸能界の権力の象徴のような人物。ゴッドファーザーのマーロン・ブランドのイメージに、実際にこれまで僕がたくさん目にしてきた人たちを参考に役づくりをしました。

 僕も今までで一番気に入っている役で、初演から見ていた方から「歴代のハワード役の中では倉石君が一番」と言っていただけ、うれしく思っています。歌は難しくて苦労していますが、ジプシーの酒場のシーンは楽しくて気持ちが若返ります。再演、再々演と回を重ねるほどに充実してきて楽しくてなりません。今年の9月13日(火)には長野市民劇場の招きで、ホクト文化ホール(県民文化会館)で上演の予定です。
二役を演じ切る

 最近の舞台『名探偵ポワロ・ブラックコーヒー』では二役を演じています。初めは車椅子に乗ったまま毒殺される教授役で、死んでから15分間はピクリとも動けません。3幕目からロンドン警視庁の警部役で登場しますが、全く違うキャラクターで外見も声も変えているので、観客の大半が教授を演じているのが僕だと分からないようです。友人も僕だと分からなかったんですよ。カーテンコールでは警部役の姿で出ているため、「教授役の役者がカーテンコールに出ていないが、誰がやっているのか」と、観客から問い合わせが来るようになりました。「ヤッター!」ですね(笑)。

 そのほかにも小林幸子、川中美幸、にしきのあきらさんといった歌手が座長を務める芝居にも出演していますが、どんな舞台でも真剣に取り組んでいます。

 僕は長いこと、役づくりを倉石功というキャラクターでいいんだと思っていました。「ザ・ガードマン」が終わり、劇団に入ってこれが間違いであることに気付くまで続きました。役柄を分析するのはあまり好きではありませんでしたが、今は観客の目線で考え、メソードなどでより深くリアルな役づくりをするようになりました。

 常に初日の新鮮な気持ちを忘れず、緊張感を持って舞台に立っています。60歳を過ぎて、ますます芝居の魅力と面白さにはまっています。
(聞き書き・西沢よしえ)
(2011年4月9日号掲載)

=写真=『毒薬と老嬢』で大先輩と共演

 
倉石功さん