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24 「フォロー・ミー」(1972年) 〜ラストが違う映画あるの?

 Q 最近、テレビで見た映画のラストが映画館で見たのと違ったように思うのですが、なぜでしょう?

 A 映画館での経験が昔のことであれば、記憶が変容した可能性もありますが、ラストが異なるバージョンがあった可能性もあります。

 例えば、ヒッチコック監督の名作『見知らぬ乗客』。ハリウッド版と英国版と呼ばれているラストの異なる2つのバージョンがDVDにも収録されています。
公開時には、製作や配給会社などの都合で監督の思い通りにならなかったものを、再度編集し、ディレクターズカットとして、新たに公開する場合など、結末そのものが違わなくても、前後のカットが違うので、ラストの印象が大きく変わってしまうこともあります。

 ハリウッドの場合、公開前にスクリーニングと呼ばれる一種の試写会風の市場調査を行います。そこでの観客の反応を見てラストを作り替えることもままあります。典型的な例は、エイドリアン・ライン監督の『危険な情事』。公開版では、当初と逆の結末になってしまいました。

 特に、文化の異なる外国映画を米国内で公開する場合、このスクリーニングに熾烈(しれつ)な攻防があります。周防正行監督の『Shall  we ダンス?』は2時間16分の作品ですが、アメリカ公開版は1時間58分強。かなりの部分がカットされ、ラストシーンでかかる音楽も違っていて、日本公開版とは趣の違うものになったようです。

24-kinema-0402p.jpg ところで、『Shall  we  ダンス?』の登場人物の名前、覚えていますか? 探偵の三輪徹(柄本明)。ミアとトポルから取ったといわれています。2人の組み合わせといえば、『フォロー・ミー』(1972年)。周防作品の中でも、映画のポスターが映し出されています。

 アメリカでの公開タイトルは『THE PUBLIC  EYE』。つまり、私立探偵ですね。ミア・ファロー演じるセレブ妻ブレンダの素行調査のために尾行を依頼されるのが、トポル演じる私立探偵クリストフォルー。英国上流社会の息苦しい家庭に閉じ込められた自由なアメリカ女性はいつしか見知らぬ無言の尾行者に好意を抱き始め、探偵も彼女の心を理解し始めるのですが...。妻が誰かに心を移したと知った夫は...。

 奇妙な三角関係を軽妙なタッチで描いたラブロマンス。小品ながら、ピーター・シェーファーの脚本を『第三の男』で知られる名匠キャロル・リードが監督し、音楽はジョン・バリーが担当。熟達の職人たちの仕事が堪能でき、見終わってきっと心が温かくなります。

 (『フォロー・ミー』のDVDはキングレコードですが、秋にグランドシネマズの「午前十時の映画祭」で公開も予定されています)
(2011年4月2日号掲載)

=写真=『フォロー・ミー』 発売・販売/キングレコード 4935円
 
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