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29 過度の集中はアンテナを固定してしまう

 「考えても考えても」ひらめきが起こらないので、いったんその問題に取り組むのをやめて、お風呂に入ってのんびりしていたら、突然ひらめきが起こった、というような経験をしたことはないでしょうか。ひらめきの特徴の一つに、リラックスした、思いもかけない状態で起こりやすいという点があります。

リラックスとひらめき
 アルキメデスが、浮力の原理の基となったひらめきを得たのは、公衆浴場で湯につかっている時であったと伝えられています。湯川秀樹が中性子の理論の基となるひらめきを得たのも、昼寝から目覚めた時であった、というのは有名な話です。両者に共通する点が「リラックス時」です。では、リラックスすると、なぜひらめきが起きやすくなるのでしょうか。

 知性は、ひらめきを起こすために、さまざまなヒントを使おうとします。それらのヒントは、考えているその場で他者から与えられるものもあれば、潜在意識にストックされている、自分自身が過去に獲得したさまざまなデータや知識から取り出される場合もあります。この意味で、潜在意識は、多くの引き出しが積み重ねられている巨大な倉庫のようなものです。知性はその倉庫の中の引き出しから、ひらめきを起こすために必要なヒントを引き出して、それらを組み合わせて、ひらめきを促します。

 しかし、一つの方向に集中して考え事をしていて、その集中が過度になったとき、「どの引き出しからヒントを探すべきか」という、ヒントの引き出しを選ぶアンテナが自由に動くことができにくくなることがあります。これが、いわゆる「固定観念」などといった言葉で表現される、自由なひらめきが起こりにくくなる現象なのです。しかし、リラックスして、いったんその問題について考えることをやめると、固定されていたアンテナの動きが解除され、他の方向に動くことができるようになります。

 探し物をしていて、なかなか見つからずに、いったんあきらめた時、それまで思いもつかなかった場所がひらめいて、その場所で探し物が見つかり、「どうして、あそこを探すことを思いつかなかったのだろうか」と思うことがあるのは、ヒントを探すアンテナが固定されたり、固定が解除されたりする結果起こる知性の動きによるものです。

 ひらめきを起こすためには、集中することが欠かせません。しかし、お子さんが算数の問題に一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、なかなか理解にたどり着けずに苦心していることがあったら、「ちょっと、お茶を一杯飲んでからにしたらどう?」と勧めるのは、ひらめきへの意外な近道になり得ます。

(2010年7月24日号掲載)
 
たてなおしの教育