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36 分からない苦痛を避けるために落ち着きがない?

 ひらめきが起こりにくいと、考えるという行為が苦痛になり、考えることからの逃避が始まります。

 「うちの子は落ち着きがなくて、なかなか勉強に集中できない」というような嘆きを見聞きすることがあります。この場合「落ち着きがない」が「原因」で、「勉強に集中できない」が「結果」と捉えていることになりますが、実は原因と結果が逆である場合が少なくないのです。

 テニスの打球練習をし始めたとき、なかなかラケットに球が当たらずイライラした経験はないでしょうか? フォームを整え、練習を重ねているうちに、球が当たるようになれば、だんだん練習が面白くなり、長時間にわたって練習し続けることが可能になってきます。しかし、空振りばかりを重ねていると、イライラが積み重なるばかりで、次第に耐え難くなり、やがては練習そのものをやめてしまいます。

 知性は、四六時中、絶えず、さまざまな物事を理解しようとします。しかし、なかなかひらめきが起こらない、つまり、空振り状態が続くと、ストレスが次第に高まり、そのストレスから何とかして逃れようとするようになります。

 空振り続きのテニスで生じるストレスは、テニスをやめれば逃れることができます。しかし、知性の働きを止めることはできません。そこで、人間は、「考える」↓「ひらめかない」↓「苦痛」というストレスから逃れるために、知性を「働かせながら」も、同時に、知性の働きに自分で「ブレーキ」をかけるようになります。それはちょうど、ハンドブレーキをかけたままで車を運転するのに似ています。

 知性を「働かせながら」も「ブレーキ」をかける方法の一つは、知性を、ゆっくり働ける環境に置かないことです。以前、説明したように、ひらめきを起こすためには、知性がそのアンテナを内面に向けて集中させることが欠かせません。ですから、集中できなくさせるためには、体を動かし続けたり、外界の音響、映像などに意識を分散、拡散すればよいわけです。つまり、「気が散る」状態にし続けることで、「ひらめかない」ストレスから逃げようとするのです。

 お子さんが「落ち着きがない」ために、勉強に集中できない状態にあるとするならば、原因と結果をひっくり返して、「(考えても)分からない苦痛を避ける」ために「落ち着きがなくなっている」のではないか、という可能性を考えることは大切です。

 その可能性があるとしたら、まずは、勉強のどこかの分野で、「わけわかんない」という状態が発生していないかを確かめることが解決への第一歩でしょう。

(2011年2月26日号掲載)
 
たてなおしの教育