記事カテゴリ:

37 「なぜ」生じたかを発見 学ぶ力への自信取り戻す

 「分からない」という状態が長く続くと、「学ぶこと」自体への苦手意識、そして、自信喪失が生じてきます。この問題を解決するためには、苦手意識が「なぜ」生じたのかを、本人自身が理解することが有効です。

 何らかの科目で「分からない」状態が続くと、その授業があるたびに、子どもは「分からない」↓「僕は○○(科目名)が駄目だ」と自分自身に言い続けることになります。しかし、授業のたびに、これらの言葉を心の内でつぶやき続けているうちに、いつの間にか「○○」の部分が抜け落ちて「僕は駄目だ。駄目な人間なんだ」と、知らず知らずのうちに、自分の能力や存在全体に対する自信を失っていくことが少なくありません。

 科目によっては学校卒業後、それらの科目で取り扱う事柄に触れる機会が、日常的にそれほど多くないものがあります。その場合は苦手感を抱いていたとしても「いやあ、中学時代は○○が苦手でねえ」などと、一つの思い出として記憶のかなたに追いやることも可能です。しかし、触れる機会が避けられないどころか、増加しそうな科目の場合はどうでしょう。例えば「英語」。

 日常で、英語が話題になるたびに、「私は英語は駄目で...」と口にし、そのたびに、悲しみや怒りなどの暗い感情がさっと自分の心に影を落とす-。そして、自分が感じている苦手感を子どもには感じさせたくないと、不安や焦りを感じている人はないでしょうか?

 現在、私は大学でこのコラムでご紹介してきた、知性の仕組みの研究を土台にした「たてなおしの英語」という科目を教えています。この授業が目的とするのは、英語の「分からない」部分を、根っこから少しずつ解きほぐして理解し直すことだけでなく、それ以上に、英語学習において「なぜ、何が、どのように分からなかったのか」という「苦手感が発生した知性のプロセスの全体像」を発見させることです。そして、この発見を通じて、英語だけでなく、自分の「学ぶ力への自信」を取り戻す学生が少なくありません。

 このコラムは、これまで、教育の問題を「一般論」として取り扱ってきました。次回からはしばらく、英語に苦手意識を抱いている子どもたちと大人、そして、彼らを助けたいと願っている人々に向けて、「英語ができるってどういうこと」「英語学習のどこに、どうしてつまずくの」「英語力はどうやって立て直せば」などの問題を扱います。

 英語学習という「具体的」問題の理解の立て直しを通じて、理由が分からないまま心に渦巻く「『分からない』悲しみと不安」から脱出するきっかけを経験していただければと願っています。

(2011年3月26日号掲載)
 
たてなおしの教育