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25 「チャイナシンドローム」(1979年) 原発問題を扱った映画は?

25-kinema-0514p.jpg Q 原発問題を扱った映画があると聞きました。どんな映画があるのか教えてください。

 A 最近、動画サイトなどでもよく見られている『東京原発』という日本映画があります。突如、「東京に原発を誘致する」と都知事が宣言することから始まる風刺劇です。2004年の作品で、山川元が監督し、役所広司、段田安則、岸部一徳、吉田日出子といったおなじみの個性派俳優が顔をそろえています。

 様々な立場からのドキュメンタリー作品も多数作られていますが、本橋成一監督の『ナージャの村』と『アレクセイと泉』は、チェルノブイリ事故のその後について、必見の映画だと言えるでしょう。また、最近では、鎌仲ひとみ監督の『六ヶ所村ラプソディー』などもDVDで見られるようになっています。

 でも、おそらく、世界的に最もよく知られた原発映画は『チャイナ・シンドローム』であろうと思います。ある発電所のずさんな管理体制を知り、メルトダウンの危機を世間に知らせようと奇矯な行動に出る男を描いた架空の物語ですが、1979年にアメリカで公開された直後、スリーマイル島の事故が起こりました。

 製作はマイケル・ダグラス、監督は『ペーパー・チェイス』のジェームズ・ブリッジズ。主演はジェーン・フォンダとジャック・レモン。ジャック・レモンの演技は圧巻でした。どちらかというと喜劇のイメージの強いレモンですが、硬派の演技者としての存在感を示し、アカデミー賞の候補にもなりました。

 もう1本、アカデミー賞の監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演女優賞の候補となった作品があります。ノーラ・エフロンの脚本を『卒業』の名匠マイク・ニコルズが監督し、メリル・ストリープが主演した1983年の『シルクウッド』です。

 原子炉の燃料を製造する会社で働いていたカレン・シルクウッドという女性が、工場内での不正に気付き、政府機関での証言後、メディアを通じて事実を明るみに出そうとしていたまさにその時、28歳の若さで謎めいた死を遂げたという事件に基づく作品です。彼女の死は、交通事故と発表されましたが、車の中にあるべき発表資料は発見されませんでした。そして、彼女の遺体はプルトニウムに蝕まれていました。

 今回の福島第1原発の事故に際し、日米の情報の受け止め方の違いが取り沙汰されました。その背景には、様々複雑な事情があるのでしょうが、30年ほど前に2本の名画が描いた危機と情報への懐疑が、その一因としてあるような気がします。
(2011年5月14日号掲載)

=写真=『チャイナ・シンドローム』発売・販売/(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 品番RDD−10002


 
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