
かつては三才地域の春祭りとして、藤の花の開花に合わせ聖徳太子講が盛大に開催された。だが、主体の商工会の活動が鈍り、学校の農繁休暇もなくなったため、今は5月中旬に太子奉賛会や親鸞聖人誕生の法会を行っている。若い父母には「聖徳保育園のお寺」という方が分かりやすい。
近隣の浄土真宗の寺院と同じく、鎌倉時代の親鸞聖人布教伝説を寺の由緒にしている。親鸞の銅像の立つ本堂がモダンな格子風に、鐘楼も格子でデザインされ、近代的な感じがする。
市の保存樹木に指定されている藤だが「由緒はよく分からない」と若槻昭雄住職。柏原(信濃町)の熱心な門徒(真宗信者)であった小林一茶は、弟子のいた善光寺町とをたびたび往復した。その際には、最短距離のこの街道を通ったに違いない。藤を詠んだ一茶句は20に上る。
仰のけに寝てしゃぶりけり藤の花
藤の花南無あゝあゝとそよぎけり
花の姿が浮かぶこれらの名句は、この寺で詠んだのかもしれない。
近くの三才駅は近年、我が子の3歳の誕生日に健やかな成長祈念の駅として名所になっている。休日などにはファミリーの行列ができる。無料の駅帽を借りて、駅舎入り口の撮影用看板を背に「ハイチーズ」と写真に収まる光景がすっかりおなじみになった。

三才駅では、今では珍しくなった硬券の記念入場券が親子セットで210円で買える。付いてくる台紙に駅のスタンプを押すのがパターンとなっている。物心がつき始めた3歳児が大人になって振り返れば、ほろ苦い人生儀礼の思い出になるかもしれない。
(2011年6月11日号掲載)