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04 食文化 〜うどんや天ぷら 納豆も〜

04-srilanka-0618p1.jpg 長い間、英国の植民地として虐げられ、血で血を洗う内戦に明け暮れたスリランカの歴史は、社会の隅々に禍根や障害をたくさん残している。貧富の差はなかなか解消しない。貧しい人の間には、センターの水道管からの盗水や一般の送電線からの盗電もある。

 一概には言い難いが、明治維新と現代が混沌としているような奇妙な社会だが、みんなが"坂の上の雲"を羨望しているといえよう。勉強する若者たちのキラキラする瞳を見ていると、きっと光輝く国になるだろうと確信する。

 私は原則無給で、往復の渡航費ももちろん自腹。食費・生活費もセンターに支払っている。住民は北インドから来たシンハラ人と南インドから来たタミル人だから、主食は米とカレーだ。パラパラのインディカ米だが、多彩なカレーで飽きることはない。各種カレーには薬膳料理のように、栄養と効能がうたわれている。熱冷まし、整腸、血圧を下げるなど、様々。香辛料も豊富だが、東南アジアで有名な青唐辛子を食べると目から火が出る思いがする。

 主食の他には、日本のおやきに似たもの、ホッパーとかロティと呼ぶ薄焼き煎餅、ヌードルやストリングフーパーと呼ぶ米粉製の細いうどんもある。センターのプリヤンタはフライパンを傾けて油だまりをつくり、そこで天ぷらを揚げる。出来上がりはべっとり。でも修業中だし、懐かしいから「おいしい」と言っておく。豆腐や納豆もあるので驚く。

04-srilanka-0618p2.jpg 周辺の東南アジアの食文化が融合、ミックスしていて面白い。果物も豊富で飽きることがない。ぜいたくを望まなければ生活に不満はない。何やら田舎の親戚に滞在しているような気分だ。

 帰国中、日本で思いがけないことを知った。

 国語学の権威だった大野晋(すすむ)さん(文学博士・学習院大学名誉教授2008年没)は「日本語の起源は古代タミル語である」という学説を発表。上代語や万葉集の語彙・文法を解析、タミル語との共通性を記した本はベストセラーになった。

 タミル人は古くインド大陸からスリランカへ移住した少数民族だ。日本語の音韻に似ているというので、耳をそばだて、物の名前など共通していないか、注意してみたが、浅学非才の身では分からない。

 しかし、アフリカで誕生した現人類が極東に伝播したとのことだから、「この国の人々は遠い親戚じゃないか」と自分の顔を鏡に映し感慨にふけることもしばしばだった。

 住民には優しく謙虚な人が多い。自己主張の強いインド人の気質とは随分違う。優秀で英国人の植民地経営に手を貸したインド人に対しては本能的な反発がある。そのことが欧米列国をも相手に戦った歴史を持つ「すごい国」に、格段の親日感情を抱く背景ともいわれている。
(2011年6月18日号掲載)

=写真=現地で作られた天ぷら定食
=写真2=月見うどん