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06 猿と共存 〜いたずら絶えないけれど〜

 日本人の私が、この国の人々にそれほどの違和感を持たないのは、自然への姿勢や食物、宗教の共通点にある。


 例えば、猿との共存。小ざかしい性質は日本の猿と同様でいたずらが絶えない。屋根のスレートを壊したり、塩化ビニールの水道管を傷めたり、食物をかすめ取るのは日光や山ノ内町の猿被害と似ている。


 いたずらが目に余ると、私は怒って「コラ!」と大声を立てたり、石を投げるふりをして威嚇する。一時は効果があるがすぐに慣れて、厚かましい猿面でしゃしゃり出てカメラを向けるとポーズまで取る。


 有名なミヒンタレ遺跡での猿の観光客への横行ぶりはテレビの話題で、日本でも放映されるほどだ。スリランカ人はかわいいという価値観が強いのか、あまり追い払うことはしない。個人宅では餌付けをする人もいる。


 毎朝、波板状のスレートの屋根板を揺すって餌をねだりに来る。都会から離れると家は大きな木々の中にあるから、強い風は心配ない。日本のように尾根板を固定していないから、板は簡単に動く。


 キリスト系の1000人を超す大きな学校でも、構内を猿軍団が跋扈している。休み時間の運動場の騒ぎにも平気だ。校舎のどの窓にも厳重な網が張られているのが異様だが、網がなければ校舎内も猿が島になってしまうだろう。


 モンスーン入り(10〜11月)になると、真っ白なチョウが集団で移動する光景が出現するのも珍しい。スリーパーダという聖なる山に向かうという。山頂にはある足跡があり、仏教徒は釈迦の、ヒンズー教徒はシバ神の、イスラム教徒とキリスト教徒はアダムの足跡と信じている。


 民族抗争の歴史はあるが、各教徒は互いの宗教を尊重している。仏教徒がヒンズー寺院の前を通る時は、軽く頭を垂れる。ヒンズー教は日本の神道に似て、八百万の神々が祭られている。本来は原始・土着信仰が原点で、前身はバラモン教だ。


 アニミズム=自然界の全てに霊魂や精霊が宿ると信じられている。北欧の精霊信仰にも共通する。

(2011年7月16日号掲載)


=写真=民家の屋根に餌をねだりに来た猿