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27 「アフリカの女王」(1951年) 〜映画監督に必要な才能は?

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 Q 最近、お笑いタレントさんらが映画監督をしていますが、監督に必要な才能って何ですか? 

 A 個人的な印象ですが、私の会ったことのある映画監督さんたちは、総じて腰の低い方が多い気がします。


 映画は総合芸術ですから、様々な職能を持った人たちが個性をぶつけ合うことで成立しています。うまく調整機能が働かないと空中分解してしまいますから、映画監督にはある程度調整能力が必要です。


 同時に、全員にこれが作りたいというイメージを明確に示し、納得させるだけの強固な意志も求められるわけです。相反する二つの要素を併せ持つことができれば、まず条件は整ったといえるでしょう。


 ハリウッドでも優秀な俳優にして名監督という人も少なくありませんし、監督を本業に、演技者としても活躍する人もいます。例えば、クリント・イーストウッド。そして、彼が常に意識していた監督の一人に、ジョン・ヒューストンという伝説的人物がいます。


 イーストウッドは彼をモデルとした『ホワイトハンターブラックハート』(1990年)という作品を作っています。映画産業と、そこで働く人々の才能との葛藤、さらに人間性の奥の闇を描くこの映画は、『ダーティハリー』的なアクション映画を期待されるむきには、少々、難解かもしれません。


 本日、ご紹介するのは、イーストウッドが描いて見せた撮影現場で実際に撮られていた映画の方です。ハンフリー・ボガートが念願のアカデミー主演男優賞を獲得した『アフリカの女王』(1951年)。


 キャサリン・ヘプバーン演じる堅物女性とボガート演じる酔いどれ船長。不釣り合いな中年カップルがアフリカの奥地で、ドイツ軍相手に演ずる冒険活劇です。名優2人の軽妙なやりとりとアクションが融合し、アメリカ映画協会が映画100年の記念に選んだ100本の第17位にランクされるなど、現在でも人気の高い作品です。


 しかし、イーストウッドが描いてみせたように、強烈な個性の持ち主であったヒューストン監督のアフリカ撮影現場は、本当に大変なことになっていたようです。頭に来たヘプバーンは後日、「『アフリカの女王』はいかに作られたか、あるいは、私はいかにボガート、バコール、ヒューストンとアフリカに渡り、正気を失いかけたか」(日本語版書名は『「アフリカの女王」と私』)という長い題名の本を書きました。キャストやスタッフにとって、伝説の巨匠より腰の低い監督さんとの仕事の方が幸福なのかもしれません。

(2011年7月2日号掲載)


=写真=『アフリカの女王』発売/アイ・ヴィー・シー 3990円

 
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