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42 二極化している英文法への対応

「説明しない」指導は間違った「理解」を招く

 前回、「英文法が分からないので、英語が苦手」という中学生への対応が、二極に分かれていると書きました。それは、英文法を「なるべく教えないようにしよう」という方向と、「もっと分かりやすく教えよう」という、正反対の2方向です。


 まずは、「英文法をなるべく教えないようにしよう」という方向について。


 この考え方は、「文法を教えようとするから英語が苦手になる」のだから「教えない方がよい」と、文法の説明をしない、あるいは最低限「触れる」程度とするものです。


 この考え方に基づく授業では、生徒たちは文の構造を理解しないまま、教科書の英文と先生が読み上げるその英文の訳を丸暗記して、定期試験をしのぐことが多くなります。


 「〈オカアサン〉ダイスキ」と暗記した九官鳥が、お父さんが出てきたときに「〈オトウサン〉ダイスキ」とは言い換えられないように、丸暗記した文は応用がききませんから、実力試験で教科書とは異なった文が出題されると(それまでに学んだはずの文法項目によって構成される文であっても)歯が立たない場合が出てきます。


 健全な状態にある知性は絶えず「(分からないことを)理解しよう」と働きますから、「丸暗記学習(つまり、理解しない学習)」は、サイドブレーキをかけながら車を走らせようとするようなものです。したがって、子どもたちの知性の働きが活発であればあるほど、その知性を痛めつけることになります。


 文法を「説明しない」指導はさらなる問題を引き起こします。


 子どものころ、「予防注射をした夜は、お風呂に入らないでください*」と言われたことがありませんか?「なぜだろう...」と疑問に感じても、答えが与えられないので、子どもながらに頭をひねり、「お風呂に入ると、注射針を刺した穴からお湯が入っちゃうのだ」と、注射をした部分の腕をぬらさないように上に持ち上げて「長風呂」をしたりします。


 知性の働きが活発な生徒は、文法の説明が与えられないと、「理解できない」という苦しさから逃れようと自力で「理由」を見いだそうとします。こうして発見した「理由」が、運良く正しい理解であればよいのですが、間違った理解であるとその誤りは発見されないまま、「分からなさ」に拍車をかけ、苦しさを倍増することになります。


 文法を説明しない理由としてよく見聞きする他の理由があります。それは次回で書きます。

 *主な理由は「安静にする」(入浴は体力を消耗するため)。現在予防注射程度では、あまり聞かれないアドバイスです。

(2011年8月27日号掲載)

 
たてなおしの教育