
今年一番思い知らされたのは「天災は想定外でやってくる...」だろう。篠ノ井塩崎地区の名刹・康楽寺も"想定外"の天災に襲われたことがある。
その恐ろしい出来事が起きたのは1985(昭和60)年8月17日16時ごろのこと。
「夕立がポツポツと降り始めて10秒もたたないの。洗濯物を取り込もうと家にとんで帰ろうとしたら、ドーンでしょ。爆弾が爆発! その場に座り込んでしまった。もやか霧か周りは真っ白け。もうおしまいだと思ったわ」
そのうちに火炎が見えた。本堂から火柱が立ち上り「耳が聞こえなくなって、はってようやく軒下にたどり着いたの」。参道に近い民家の婦人の体験談である。豪壮な本堂が火だるまになって燃え落ちる一部始終を目撃したという。
千曲川の洪水は"想定内"の土地柄だが、広い平地の農村地帯で津波も山崩れも無縁だ。
「まさかカミナリさんとは...」と今も語り継がれている。
近くの山の手の旧桑原村(稲荷山から松本へ延びる善光寺西街道沿いの千曲市桑原)には雷神伝説が残る。
粗忽なカミナリさんが雲を踏み外して畑の井戸に落ちた。見つけた農夫が「この野郎、悪さするな」とフタをして閉じ込めた。
そのカミナリさんは「カミナリよけを教えるから助けてください」と言うので、しぶしぶ放逐することにした。「私らクワの木が嫌いでして。お屋敷にクワを植えて、クワバラ、クワバラ、クワバラと3回唱えてください。絶対、そこには落ちませんから」と言って天空へ逃げ帰った。

塩崎は古代から条里制が施行された生産力を誇る土地だ。この寺は善光寺に近い東町の康楽寺の"本家"に当たる。書ききれないほどの由緒あふれる寺で、再建された本堂がまず一見に値する。鉄筋コンクリートの3階建て風。「善光寺本堂より大きいかも...」とびっくりする。京都風の庫裏も庭も見事だ。築地塀に囲まれた境内にあるしだれ桜も花の時季には見ものだ。
JR稲荷山駅の駅前広場で「すぐソコよ」と住宅街を指差された。だが、国道とJRの間にありながら、よそからの参詣者はなかなかたどり着けない。やっと到着すると、親鸞聖人と苦楽を共にした創建者・西仏(さいぶつ)坊の大きな銅像が迎えてくれる。