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44 英語のシャワーを浴びても 〜英語の音は耳を通過しても頭には残ってくれない〜

 「シャワーのように英語を浴びさえすれば、英語ができるようになる」というのは本当でしょうか?


 年齢が小さな子どもたちの場合については、母語に負けないくらい多くの時間数、英語を浴びることで、身に付けていくことは可能のようです。しかし一定の年齢になると、その人の英文法の理解力と理解している単語の数によって、大きく成果が異なってきます。


 次の(同じ文字数の)3つの文を暗記してみてください。

 (1)「野原で2匹のウサギが飛び跳ねている」

 (2)「はてらのぎねうびでにきるひいのさはがと」

 (3)「炭猫枯れる本海原板昨年」


どの文が覚えやすいですか? 覚えやすい順番は、(1)(3)(2)ではないでしょうか?


 (1)がなぜすっと頭に入るのかといえば、単語の意味と単語の間の関係(何がどうした?↓2匹のウサギが飛び跳ねている。 どこで?↓野原で)が理解できるからです。(2)は(1)の文の「文字」(のはらでにひきのうさぎがとびはねている)をばらばらにして組み替えたものです。文字は同じであるにもかかわらず頭に残らないのは、それぞれの文字の間に何の意味も見いだせないからです。(3)は単語をとらえることはできますが、単語と単語の間にどのような関係があるのかが分からないので、単語を順番通りに記憶することは簡単ではありません。


 ノリを養殖するための「網ヒビ」と呼ばれる網があります=イラスト。海の中にその網を固定して沈めると、そこを通過する海流の中のノリの胞子がその網に引っ掛かって、ノリが育っていくのです。


 一定の年齢になって、英語を第2言語として学ぶ人の英文法の理解力と単語力は、この「網ヒビ」に例えることができます。英文法の理解力と単語力が増えれば増えるほど(つまり、文の読解力が付けば付くほど)、英語をシャワーのように浴びたとき、その人の頭に残り、使うことができるようになる英語の量は飛躍的に増えていきます。


 一方、読解力がほとんどない状態で英語のシャワーを浴びるのは、網ヒビなしにノリを養殖しようとするようなもので、英語の音は耳を通過はしても、頭に残ってはくれません。ちょうど(2)をいくら聞いても頭に残らないのと同じようなものです。


 英語のシャワーを浴びることによって、繰り返し浴びた英語の「音」が頭に残ることはあり得ます。しかし、音の「意味」を理解しない限り、聞き取った音を「言葉」として使うことはできません。そして、その言葉を自分の言いたいことを表すために組み合わせるには、やはり、英語の仕組みの理解に取り組むことが近道なのです。

(2011年10月22日号掲載)


 
たてなおしの教育